読書

出久根達郎『雑誌倶楽部』

私は雑誌が好きだ。本よりも断然雑誌派である。飽きっぽい私にとって、雑誌はいろいろ書いてあるところが良い。ひとつの記事を読んでいて、おもしろくなければ次の記事、次の記事、と飛ばし読みすることができる。雑誌はすぐ手に入らなくなってしまうが、そ…

田中ロミオ『人類は衰退しました』第8巻

個人的には今までで一番良かったと思うのですが、皆さんはどうでした? 扱われているそれぞれのネタは既視感があるというか、いつものロミオ節だなという感じなのですけど、組み合わせ方が抜群にうまいですね。第7巻の学級崩壊に関する話があまりひねりのな…

荒川工『ワールズエンド・ガールフレンド』

よく訓練された横山三国志のファンであれば、「これは孔明の罠だ」と疑ってみるのはこれから騙されるフラグである、ということをよくご存じでしょう。本書はまさに「孔明の罠」という感じで、小賢しい読者(私とか)は見事に掌の上で踊らされ、悔しがってその…

ジョルジョ・アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』

アウシュヴィッツの残りのもの―アルシーヴと証人作者: ジョルジョ・アガンベン,上村忠男,広石正和出版社/メーカー: 月曜社発売日: 2001/09/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 64回この商品を含むブログ (57件) を見るOutline:アウシュヴィッツにおける…

ジャン=リュック・ナンシー『無為の共同体』

無為の共同体―哲学を問い直す分有の思考作者: ジャン=リュックナンシー,西谷修,安原伸一朗出版社/メーカー: 以文社発売日: 2001/06/15メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 51回この商品を含むブログ (29件) を見るOutline:バタイユ、ハイデガーの読み直し…

砂義出雲『寄生彼女サナ』

自己と異なる他者に異なるものを発見し、異なるがゆえにそれを讃える人類学者は、自己の集団から遠く離れ、他者の集団にも決して同化することができないような存在である。そして彼の観点や方法は、あくまで彼の出自を決定している西欧の体制と歴史に属する…

田中ロミオ『人類は衰退しました』第6巻

人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)作者: 田中ロミオ,山崎透出版社/メーカー: 小学館発売日: 2011/02/18メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 409回この商品を含むブログ (83件) を見るようやく最新刊に追いつきました。今巻には某鳥人間コンテストと小学館ネ…

田中ロミオ『人類は衰退しました』第5巻

人間は考える芋だと思いました。いつだって芋蔓式だから。 ―93頁― 人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)作者: 田中ロミオ,山崎透出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/01/19メディア: 文庫購入: 17人 クリック: 496回この商品を含むブログ (132件) を見る今巻…

田中ロミオ『人類は衰退しました』第4巻

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)作者: 田中ロミオ,山崎透出版社/メーカー: 小学館発売日: 2008/12/19メディア: 文庫購入: 15人 クリック: 197回この商品を含むブログ (188件) を見る第3巻のシリアス展開から一転、ゆるいコメディに回帰しています。ただ…

田中ロミオ『人類は衰退しました』第3巻

人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)作者: 田中ロミオ,山崎透出版社/メーカー: 小学館発売日: 2008/04/19メディア: 文庫購入: 19人 クリック: 755回この商品を含むブログ (266件) を見る最新刊も既に読んでいますが、「あとがき」が結構ショックでした・・・・・・…

田中ロミオ『人類は衰退しました』第2巻

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)作者: 田中ロミオ,山崎透出版社/メーカー: 小学館発売日: 2007/12/19メディア: 文庫購入: 27人 クリック: 715回この商品を含むブログ (318件) を見るそう簡単に最新刊(6巻)にたどり着けると思うなよ!というわけで第2巻を…

田中ロミオ『人類は衰退しました』第1巻

人類は衰退しました (ガガガ文庫)作者: 田中ロミオ,山崎透出版社/メーカー: 小学館発売日: 2007/05/24メディア: 文庫購入: 37人 クリック: 621回この商品を含むブログ (569件) を見る今後また、それなりの分量の田中ロミオ論を書く予定が出来たので、「最近…

倉田百三『愛と認識との出発』(1921年)―社会と人間の発見

愛と認識との出発 (岩波文庫)作者: 倉田百三出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/10/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (11件) を見る 例えば大野の黎明に真白い花のぱッと目覚めて咲いたように、私らが初めて因襲と伝説とか…

太宰治『斜陽』

斜陽 他1篇 (岩波文庫)作者: 太宰治出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1988/05/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (12件) を見る 私は確信したい。人間は恋と革命のために生まれてきたのだ。 −本書58頁− 戦争を経て没落した華族…

ポール・ギャリコ『猫語の教科書』

まだほんの子猫のとき、母を亡くすという不幸にあって、私は生後六週間で、この世にたったひとり放りだされてしまいました。でも、そこで悲嘆にくれたわけではありません。だって私は頭もいいし、顔だって悪くないし、気力にあふれ、自信もあったんですもの…

磯田道史『武士の家計簿』

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)作者: 磯田道史出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/04/10メディア: 新書購入: 16人 クリック: 113回この商品を含むブログ (152件) を見る文句なしの傑作。本書のなかで主張されている内容が新鮮で興…

山尾三省『回帰する月々の記』―生きることと書くこと

この四年半の間に、僕としてはこれまでの自分の人生の最深の出来事と呼ばざるを得ぬ、妻の死に会った。……けれども僕としては、月々に記す約六枚の原稿用紙のうちに、その月その月の出来事や気持ちを、死の側ではなく生の側に向けてある限りの気力を振りしぼ…

カール・シュミット『政治神学』

アニメやゲームの話を期待している方はゴメンナサイ。次くらいにはアニメの話を書きます。 それはともかく、今日はシュミットの『政治神学』を読んでいました。実のところ、シュミットに対するこれまでの自分の理解は大きく間違っていたと言わざるを得ないと…

カール・シュミット『政治的なものの概念』

最近はゼミに出たり『政治的なものの概念』を読んだりしていた。相手の存在を否定するところから政治が生まれるって、ちょっと勘弁してくれと思う。でもシュミットがとびきり頭良いのも確かで、英米の社会多元主義は個人の自由と団体の自由をごっちゃにして…

ノーマン・ジョンソン『福祉国家のゆくえ』

福祉国家のゆくえ―福祉多元主義の諸問題作者: ノーマンジョンソン,Norman Johnson,青木郁夫,山本隆出版社/メーカー: 法律文化社発売日: 1993/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (1件) を見る割と古い本ですが、「福祉国家…

仲正昌樹『集中講義!アメリカ現代思想』

集中講義! アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険 (NHKブックス)作者: 仲正昌樹出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2008/09/25メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 7人 クリック: 125回この商品を含むブログ (85件) を見るアメリカのリベラリズムに関するわ…

エドワード・W・サイード『知識人とは何か』

知識人とは何か作者: エドワード・W.サイード,Edward W. Said,大橋洋一出版社/メーカー: 平凡社発売日: 1995/05/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (3件) を見るウェーバーの「精神なき専門人」という官僚制についての規定は…

ジャン=リュック・ナンシー『無為の共同体』

無為の共同体―哲学を問い直す分有の思考作者: ジャン=リュックナンシー,西谷修,安原伸一朗出版社/メーカー: 以文社発売日: 2001/06/15メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 51回この商品を含むブログ (29件) を見る過去に2回ほど挫折したのだけど、今回はな…

岡真理『記憶/物語』

記憶/物語 (思考のフロンティア)作者: 岡真理出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2000/02/21メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 43回この商品を含むブログ (50件) を見る記憶とは本人が所有する(だけの)ものではなくて、フラッシュバックのように制御不能…

安丸良夫『出口なお』

「出口なお」―女性教祖と救済思想 (洋泉社MC新書)作者: 安丸良夫出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2009/05/02メディア: 新書 クリック: 14回この商品を含むブログ (5件) を見る『出口なお』は、安丸の最高傑作という人もあれば、あれはもう歴史学ではないとい…

萱野稔人『国家とはなにか』

『国家とはなにか』作者: 萱野稔人出版社/メーカー: 以文社発売日: 2005/06/17メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 142回この商品を含むブログ (118件) を見る整合性のとれた美しい論理で書かれた、これから国家を語る上で必読と言える一冊である。ただ、…

栄沢幸二『「大東亜共栄圏」の思想』1995.12

この世に「正しい戦争」というものは存在しないが、だからといって全ての戦争が等しく悲惨で救いがないというわけではない。正しくはないが避けられない戦争というものがあり、また、戦争によって人々が多少はマシな状態になることがあるのも確かだ。戦争が…

片山杜秀『近代日本の右翼思想』

近代日本の右翼思想 (講談社選書メチエ)作者: 片山杜秀出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/09/11メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 210回この商品を含むブログ (43件) を見る日露戦争後から第二次大戦までの右翼思想を包括的に扱おうと試みた、意欲的…