2009-01-01から1年間の記事一覧

『ef』論のためのノート:マルチシナリオのトラウマを越えるために

『ef - a fairy tale of the two.』PS2移植版の発売日が決定したことを記念しての、久々の『ef』論です。ちなみにこのブログでは原作上巻、アニメ第1期、原作下巻、アニメ第2期とこれまでにもくり返し『ef』について書いてきましたが、はっきり『ef』につ…

ポール・ギャリコ『猫語の教科書』

まだほんの子猫のとき、母を亡くすという不幸にあって、私は生後六週間で、この世にたったひとり放りだされてしまいました。でも、そこで悲嘆にくれたわけではありません。だって私は頭もいいし、顔だって悪くないし、気力にあふれ、自信もあったんですもの…

マジョリティとして歴史を語るために

逆説的に聞こえるかもしれないが、「わたし」が「あなた」の苦しみに「共感」することができるのは、「あなた」が「わたし」の苦しみと共約不可能な苦しみを経験していることを理解したときに、はじめて可能である。苦しみの共約不可能性があるからこそ、苦…

和解の不可能性と対立の否認

自転車に乗りながらこんなことを考えた。 ギリシア悲劇でいうところの「デウス・エクス・マキナ」は、物語の登場人物相互の対立が酷くなりすぎて、まっとうなやり方では和解不可能だと思われたときにあらわれる。本当に和解が不可能かどうかはさておき、少な…

最近は民衆宗教の経典を読んでいるのですが、ときどき「これはブログっぽいな」と思うことがあります。文章のほとんどは「神は〜と言った」とか「〜するものは地獄に落ちる」といった話なんですけど、ちょこちょこと「〜に祭壇を作るので近くに住んでいる誰…

戦争を語ることについて――太平洋戦争開戦の日に寄せて

日本が中国に侵略戦争をおこなっていたかぎり、私たちは惰性的で無気力なものであったにせよ、抵抗意識をもちつづけてたのであった。……ところが、やがて戦争がヨーロッパに飛火し、それがふたたびアジアにかえって、日本が昭和十六年の暮についにあの絶望的…

新井円侍『シュガーダーク』

シュガーダーク 埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)作者: 新井円侍,mebae出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/11/28メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 551回この商品を含むブログ (132件) を見るあまりにもタイトルが…

磯田道史『武士の家計簿』

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)作者: 磯田道史出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/04/10メディア: 新書購入: 16人 クリック: 113回この商品を含むブログ (152件) を見る文句なしの傑作。本書のなかで主張されている内容が新鮮で興…

はてな界隈ではまた性犯罪と自己責任の話が盛り上がっているようですが、「犯罪者が悪いことはわかっているけど、実際に悪い人がいるのだから自分の身は自分で守るしかないじゃん」という至極当然かつ陳腐な意見を言う人は、自分自身の発言がもつパフォーマ…

『劇場版マクロスF』についての雑感

初代マクロスのように「テレビではイマイチだったけど劇場版は凄い!」みたいな展開を期待しながら劇場に足を運んだわけですが、結論から言えば、テレビ版より良くも悪くもなっていませんでした。あと、これって前後編なんですね。全然知らなかったので、最…

山尾三省『回帰する月々の記』―生きることと書くこと

この四年半の間に、僕としてはこれまでの自分の人生の最深の出来事と呼ばざるを得ぬ、妻の死に会った。……けれども僕としては、月々に記す約六枚の原稿用紙のうちに、その月その月の出来事や気持ちを、死の側ではなく生の側に向けてある限りの気力を振りしぼ…

『CHAOS;HEAD』

カオスヘッド 1 通常版 [DVD]出版社/メーカー: VAP,INC(VAP)(D)発売日: 2009/03/04メディア: DVD クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る本放送時には完全にノーチェックだったのですが、今頃になってはまってしまい、結局二日で全話を視聴しました…

杉井光『さよならピアノソナタ2』

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)作者: 杉井光,植田亮出版社/メーカー: メディアワークス発売日: 2008/03/10メディア: 文庫購入: 13人 クリック: 467回この商品を含むブログ (124件) を見る第1巻を読んだのが1年半前で、その間に長編4冊と短編1冊が…

twitterを始めて以来、更新頻度が落ちているこのブログですが、最近はネットで文章を書くこと自体から遠ざかり気味です。たぶん、ネット以外で文章を書く機会が増える一方なので、そちらで満足してしまうのでしょうね。 それでも暇を見つけては、というか現…

カール・シュミット『政治神学』

アニメやゲームの話を期待している方はゴメンナサイ。次くらいにはアニメの話を書きます。 それはともかく、今日はシュミットの『政治神学』を読んでいました。実のところ、シュミットに対するこれまでの自分の理解は大きく間違っていたと言わざるを得ないと…

カール・シュミット『政治的なものの概念』

最近はゼミに出たり『政治的なものの概念』を読んだりしていた。相手の存在を否定するところから政治が生まれるって、ちょっと勘弁してくれと思う。でもシュミットがとびきり頭良いのも確かで、英米の社会多元主義は個人の自由と団体の自由をごっちゃにして…

社会/国家/代表制

・09/11/10 今日は何度も「デウス・エクス・マキナ」という言葉を思い出した。現代人にとっては馬鹿馬鹿しく見えることでも、当事者にとっては、人間の力では解決不可能で、神の力を借りるしかない、と思うようなことがある。我々は神を持ち出すことの安易さ…

『とある科学の超電磁砲』についての雑感

[Blu-ray]" title="とある科学の超電磁砲 第1巻 [Blu-ray]">とある科学の超電磁砲 第1巻 [Blu-ray]出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル発売日: 2010/01/29メディア: Blu-ray購入: 4人 クリック: 231回この商品を含むブログ (116件) を見る端的に言っ…

風景論ノート

時々更新。

来月3日のゼミ報告が終わるまでは禁欲的に生きようと思うのであります。そんな中でもtwitterとアニメ視聴は続けているわけですが、『化物語』DVD1巻は大変面白かったです。戦場ヶ原ひたぎ=「信号機」という等式が私の中で確立されました。赤青黄色。 ・『…

ノーマン・ジョンソン『福祉国家のゆくえ』

福祉国家のゆくえ―福祉多元主義の諸問題作者: ノーマンジョンソン,Norman Johnson,青木郁夫,山本隆出版社/メーカー: 法律文化社発売日: 1993/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (1件) を見る割と古い本ですが、「福祉国家…

最近、自分が田中ロミオ信者であることを思い出して『CROSS†CHANNEL』を再インストールしたのですが、割と序盤に出てくる 「まだ熱血甲子園君だっていっぱいいるんだよ」 「あ、彼らはポストモダンとか言ってる連中のなかでは観察価値のある人間って見なされ…

エロゲに関して最近考えたこと

日本人に向けて日本語で語りかけることは、しばしば情報の伝達になぞらえられる。そこで隠蔽されるのは、ひとつは見知らぬ他者の存在であり、もうひとつは私自身のハイブリッド性だ。柄谷行人は「私」の内面には必ず外部が入り込んでいる、だから内/外の二項…

「ある」ことを見る

闇が内容物のように夜の空間を充たしている。夜の空間は充溢しているが、それは、何もないことで充溢している。(中略)曖昧模糊としたこの状態のなかで、あるという純然たる驚異が発せられる。 エマニュエル・レヴィナス「ある」(合田正人訳『レヴィナス・コ…

カフカと手紙

アニメにおける「携帯電話」の表現について - tukinohaの絶対ブログ領域 昨日もお知らせしましたが、ぶっちゃけ誰も読んでないみたいなので、加筆部分(の一部)だけ転載。 作家のフランツ・カフカは、恋人に向けて書いた膨大な量の手紙を残していますが、その…

以前書いた記事に加筆したら分量が2倍くらいになったので、改めてリンクを貼っておきます。 アニメにおける「携帯電話」の表現について - tukinohaの絶対ブログ領域 自分では割と気に入ってる記事です……が、加筆したせいでかえってバランスが悪くなった気も。

ループと一貫性

「死んだ人間を弔う」というのは人類社会において普遍的な行為であると考えられていますが、この場合の「死んだ人間」とは「具体的な名前をもった個人」ではなく、「共同体における死者一般」という方が適切なのかもしれません。最も原始的な社会においても…

今日は晴れのち曇り。午前中は論文執筆。本文は一応完成しましたが、規程の字数をオーバーしているので削って削って、註釈を整えて、それ以上手の施しようがないダメ論文だと悟ってから投稿しようと思います。午後はレポートの資料読み、あとすぐには役に立…

メディアミックスによってメディアが作られる論

「メディアミックス」という概念が、その響きとは正反対に、漫画やアニメといった個々のメディアをより確かな(越境不可能な)ものとしていく、という仮説を立ててみました。そもそも「ミックス」することに価値があるのは、それが本来はミックスされていない…

今日は曇りのち雨。お昼前におきて大学へ行き、青空文庫の『R.U.R』を印刷し、共同研究室で読んでいました。コーヒー片手に1時間ちょっとで読了。昨日の『山椒魚戦争』とは作者が同じですが、ファシズム期に書かれた政治小説風味の『山椒魚戦争』と比べれば…