田中ロミオ『人類は衰退しました』第6巻

人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)

ようやく最新刊に追いつきました。今巻には某鳥人間コンテスト小学館ネタの「妖精さんたち、すかいはい」、同人誌の歴史を縮図化した「妖精さんたちの、さぶかる」の2話が収録されています。特に後者は笑える内容なんですけど、パロディネタで最後まで押し通されて、田中ロミオの話を読んだという感じがあまりしない。前者の方が(やや盛り上がりに欠けるとはいえ)我々の関心から見れば重要であると思われます。

人類はかつて、宇宙まで行ったとか。
わたしたちはそんなこともわからなくなっていて。
ならこうして復刻された飛行技術の数々も、どれがどの時代のものなのか、正確に知ることはほとんど不可能であり。
それを承知で、自らの選んだ飛行技術を体系ごと引っぱってきて、どうだどうだと張り合おうというのがこのイベントです。
畢竟このコンテストは、遠くに飛ぶことや長く滞空することを争うものではなく、浪漫を競うものなのでしょう。
―本書68頁―

これを読んで思い出すのが、初期の作品の『星空☆ぷらねっと』です。特にそのなかの藤原佳多奈編。自閉症の天才、サヴァン症候群というモチーフは形を変えながらくり返しロミオ作品に現れるのですが、今回の話もその変奏であると言えるでしょう。

僕らは皆、佳多奈に出会って鍵を渡すため、混沌の世界をあてもなく彷徨っていた。
―『星空☆ぷらねっと』藤原佳多奈編―

佳多奈編に対しては「自閉症をリアルに描いている」みたいな評価がされることがありますが、重要なのはそんなことではなく(むしろご都合主義だし)、一方で「孤人の夢」をきわめて魅力的に描きつつ、人の体は他者を必要としているという心身の矛盾を描いたこと、ではないかと。