田中ロミオ『人類は衰退しました』第4巻

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

第3巻のシリアス展開から一転、ゆるいコメディに回帰しています。ただし「衰退期」につきものの食糧難は相変わらず継続中。今巻には、クスノキの里の物資不足を助けるために妖精さんが作った工場を舞台とした「妖精さんの、ひみつこうじょう」、無人島に漂着した主人公が妖精さんの力を借りて新文明を築き上げる「妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ」の2話が収録されています。
「家族の危機」「学校の危機」「世界の危機」などを背景とすることが多い田中ロミオ作品では、ライフラインについても頻繁に取り上げられている印象が。「家の確保」が初期目的の『家族計画』、発電所がダウンして電気が止まる『C†C』、食料の配給が行われる『最果てのイマ』みたいな。そういうぎりぎりの状況で、生きることや繋がりをもつことの本質を描き出そうとしているのかなー、と。『人退』の妖精さんって、そもそも人類が衰退しなければ現れなかった存在なのでしょうね。その意味では、舞台が危機に陥ることとコミュニケーションの始まりは同時に起っている。
では、そういう「危機」がどのようにして始まっているのか。外部と切り離され、閉塞してしまうことではないか、と。そこに居ざるを得ない、逃げられないということ事態が危機を作り出している。『AURA』とか。そこに「外部」「他者」が現れ、危機からの脱出が謀られる。だいたいこんな感じでしょうか。
ただし、その「外」なるものが問題を解決してくれるということは、あまりない。内は外と繋がることで容貌を一変させますが、同時に外は内へと取り込まれてしまう。日常の外に出ることはできず、日常を絶えず更新することで生きながらえていく。『C†C』でも閉塞世界からの主人公自身の脱出は、ほのめかされるに留まっている。
日常は誰かが与えたものとしてではなく、ただ与えられたものとしてある。そういうシステム論的な思考を、ロミオ作品からたまに感じています。