歴史

歴史用語における「変」と「乱」の違いについて

一般個人が適当なことをつぶやくのはともかく、メディアがそれを鵜呑みにして適当な情報を拡散させるのはいかがなものかと。 ツイートによると、「変」は「成功したクーデター。成功して世の中が変わった、という勝者の視点から」、「乱」は「失敗したクーデ…

徳川綱吉の再評価について

世の中のほとんどの人間は、馬鹿でもない代わりにさほど賢くもなく、独創的なこともしない代わりに独りよがりなこともしない、ということは我々が日々実感するところですが、こと歴史に関しては「名君/暗君」「文明/野蛮」「進歩/退嬰」の二分論で切り分…

初詣の成立

という論文を、高木博志さんが10年以上前に書いておりまして。私もその内容要約を別のブログに書いたことがあるのですが、お正月なので転載しておきます(手抜きの極み)。近代天皇制の文化史的研究―天皇就任儀礼・年中行事・文化財 (歴史科学叢書)作者: 高木…

大正デモクラシーのある風景

野村隈畔『文化の問題』(京文社、1922年)より。 余が或る日、上野駅から市外線の電車に乗ると、帰営をいそぐ赤羽工兵隊の一兵士が余の側に腰をかけた。彼れは頻りに時計を出して眺め、帰営時間が遅くなると見えて電車の発車するのをもとかしがり、腰が落ち付…

福家崇洋『戦間期日本の社会思想―超国家へのフロンティア』

戦間期日本の社会思想―「超国家」へのフロンティア作者: 福家崇洋出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2010/03メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 57回この商品を含むブログ (5件) を見る第一次世界大戦の終結〜満州事変ごろまでを対象に、(高畠素之は例外と…

丸山眞男についての雑感

前回に引き続き丸山眞男について。 いま丸山を語るためには、どのような困難を引き受けなくてはならないのか。岩波新書から出ている『<私>時代のデモクラシー』を読みながら、そんなことを考えた(これは非常に良い本だと思う)。M・ウェーバーの言う「脱魔…

倉田百三『愛と認識との出発』(1921年)―社会と人間の発見

愛と認識との出発 (岩波文庫)作者: 倉田百三出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/10/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (11件) を見る 例えば大野の黎明に真白い花のぱッと目覚めて咲いたように、私らが初めて因襲と伝説とか…

専門家とアマチュア

1. 最近『長谷川如是閑集』を読んでいるのだけど、在野思想家である如是閑の「アマチュアであること」に対する考えが伺える、ちょっと面白い文章があった。第8巻の月報から引用。執筆者は本田創造。 それからしばらくして、私はまた如是閑に会いに行った。…

マジョリティとして歴史を語るために

逆説的に聞こえるかもしれないが、「わたし」が「あなた」の苦しみに「共感」することができるのは、「あなた」が「わたし」の苦しみと共約不可能な苦しみを経験していることを理解したときに、はじめて可能である。苦しみの共約不可能性があるからこそ、苦…

戦争を語ることについて――太平洋戦争開戦の日に寄せて

日本が中国に侵略戦争をおこなっていたかぎり、私たちは惰性的で無気力なものであったにせよ、抵抗意識をもちつづけてたのであった。……ところが、やがて戦争がヨーロッパに飛火し、それがふたたびアジアにかえって、日本が昭和十六年の暮についにあの絶望的…

社会/国家/代表制

・09/11/10 今日は何度も「デウス・エクス・マキナ」という言葉を思い出した。現代人にとっては馬鹿馬鹿しく見えることでも、当事者にとっては、人間の力では解決不可能で、神の力を借りるしかない、と思うようなことがある。我々は神を持ち出すことの安易さ…

南京事件関連の議論について

歴史学者の末席に座るものとしては、粘り強く啓蒙活動を続ける方々には頭が下がるとしか言いようがないのですが、同時に「これでは埒があかないのではないか?」と思うのも事実です。何というか、どうしても「アドレス」と「文体」がずれているという違和感…

日露戦争後の都市問題・その1

毎週恒例の[歴史]ですが、今回から都市史に入っていきます。初回ということで、まずは都市史の近代史的位置づけから。 近代都市の研究というのは最近の流行でもありますが、80年代ごろから活発に行われだした、割と若い研究分野です(若いから流行っている、…

日露戦争後の農村問題・その3

サボっていた分を取り返すぞ!というわけで二日連続の更新。今回のテーマは農村と祭祀についてです。 簡単に言えば、日露戦争後の農村における祭祀は2つの方向へ分化し、それぞれの方向で純粋化されていった、と言うことが出来るでしょう。その2つの方向と…

日露戦争後の農村問題・その2

というわけで久々の更新。前回から2週間経ってしまいました。今回は日露戦争以後、農村の住民たちが都市へと出稼ぎあるいは移住していくことに関する問題を取り上げます。 さて、そもそも農村の人口が都市へと流出していくことの何が問題なのか、という所か…

近代の民衆と戦争

終戦の日、ということで何か書いてみようと思ったのですが、昭和の史料をごっそり忘れてきたので大したことは書けません。 この時期になると「どうして戦争を始めなくてはならなかったの?」とか「もっと早く戦争を終わらせることは出来なかったの?」などと…

日露戦争後の農村問題・その1

前回と前々回は日比谷焼討事件に焦点を当て、政府の期待とは裏腹に大多数の「愛国者」たちが政治主体として未熟であることが日露戦争を契機として暴露され、その後に国民教化運動が行われる原因のひとつとなった、という話をしました。 今回からは国民生活の…

愛国心と政治・その2

愛国心と政治・その1 - tukinohaの絶対ブログ領域の続きです。今回も住友氏の論文を下敷きに進めて行きます。 前回の内容をまとめると、明治政府が政治主体として期待したのは、地域や政党の利益ではなく、「愛国心」によって「一国全体の利益」を考える人…

愛国心と政治・その1

日本近代史について議論する前に知っておくべきこと - tukinohaの絶対ブログ領域の続きです。 前回は長々と「近代史について語ること」について語ってきたわけですが、そろそろ本題に入ります。予告通り日露戦争の終戦後から。 スタート地点として日露戦争を…

日本近代史について議論する前に知っておくべきこと

歴史を語るということは自分の歴史観を語ることと同義である、と僕は考えています。 ところでその「歴史観」という言葉についてですが、「あの時のAの判断は正しかった/誤りだった」という価値判断のことだと考えられていたり、あるいは「Bはあった/なかった」…

国内問題としての「対外戦争」

『日本が侵略戦争したから、日本が悪いんだ』って思うのは間違えなんですか? どうして日本があんなに侵略戦争の戦線を広げられなければいけなかったの? どうしてあんなに侵略戦争で沢山の犠牲者を出さなければいけなかったの? 中国だけでも三千万人の犠牲…