2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『ef』論のためのノート:マルチシナリオのトラウマを越えるために

『ef - a fairy tale of the two.』PS2移植版の発売日が決定したことを記念しての、久々の『ef』論です。ちなみにこのブログでは原作上巻、アニメ第1期、原作下巻、アニメ第2期とこれまでにもくり返し『ef』について書いてきましたが、はっきり『ef』につ…

ポール・ギャリコ『猫語の教科書』

まだほんの子猫のとき、母を亡くすという不幸にあって、私は生後六週間で、この世にたったひとり放りだされてしまいました。でも、そこで悲嘆にくれたわけではありません。だって私は頭もいいし、顔だって悪くないし、気力にあふれ、自信もあったんですもの…

マジョリティとして歴史を語るために

逆説的に聞こえるかもしれないが、「わたし」が「あなた」の苦しみに「共感」することができるのは、「あなた」が「わたし」の苦しみと共約不可能な苦しみを経験していることを理解したときに、はじめて可能である。苦しみの共約不可能性があるからこそ、苦…

和解の不可能性と対立の否認

自転車に乗りながらこんなことを考えた。 ギリシア悲劇でいうところの「デウス・エクス・マキナ」は、物語の登場人物相互の対立が酷くなりすぎて、まっとうなやり方では和解不可能だと思われたときにあらわれる。本当に和解が不可能かどうかはさておき、少な…

最近は民衆宗教の経典を読んでいるのですが、ときどき「これはブログっぽいな」と思うことがあります。文章のほとんどは「神は〜と言った」とか「〜するものは地獄に落ちる」といった話なんですけど、ちょこちょこと「〜に祭壇を作るので近くに住んでいる誰…

戦争を語ることについて――太平洋戦争開戦の日に寄せて

日本が中国に侵略戦争をおこなっていたかぎり、私たちは惰性的で無気力なものであったにせよ、抵抗意識をもちつづけてたのであった。……ところが、やがて戦争がヨーロッパに飛火し、それがふたたびアジアにかえって、日本が昭和十六年の暮についにあの絶望的…

新井円侍『シュガーダーク』

シュガーダーク 埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)作者: 新井円侍,mebae出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/11/28メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 551回この商品を含むブログ (132件) を見るあまりにもタイトルが…

磯田道史『武士の家計簿』

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)作者: 磯田道史出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/04/10メディア: 新書購入: 16人 クリック: 113回この商品を含むブログ (152件) を見る文句なしの傑作。本書のなかで主張されている内容が新鮮で興…

はてな界隈ではまた性犯罪と自己責任の話が盛り上がっているようですが、「犯罪者が悪いことはわかっているけど、実際に悪い人がいるのだから自分の身は自分で守るしかないじゃん」という至極当然かつ陳腐な意見を言う人は、自分自身の発言がもつパフォーマ…

『劇場版マクロスF』についての雑感

初代マクロスのように「テレビではイマイチだったけど劇場版は凄い!」みたいな展開を期待しながら劇場に足を運んだわけですが、結論から言えば、テレビ版より良くも悪くもなっていませんでした。あと、これって前後編なんですね。全然知らなかったので、最…