1000-01-01から1年間の記事一覧

米田庄太郎について(社会学論)

経歴:明治から昭和戦前期にかけて活躍した社会学者。明治28年に留学し、コロンビア大学のギディングスと、コレージュ・ド・フランスのG.タルドに社会学を学んだ。明治40年に京都帝国大学に創設された社会学講座の初代講師に就任。昭和17年まで教壇に立った…

米田庄太郎について(組合運動・政治運動)

社会的民本主義(=社会的デモクラシー) ・米田庄太郎『現代智識階級運動と成金とデモクラシー』(弘文堂書房、1919年) 本書の4・5章で民本主義の立場をかなり明確に打ち出している。その背景には「強国となるには政治的・社会的デモクラシーが必要」という認…

日本社会科学の持続と展開

・自然主義について――魚住折蘆 魚住の特徴は自然主義(文学の傾向と自然科学を合わせて)を文明史的視点から理解するところ。 自然主義とは……(1)誰にでも参加できる「デモクラチック」、(2)実用的、(3)機械論的(無理想的) (3)に対する理想主義の反抗を述べた…

国体と社会―総論

・藤田省三の「天皇制社会」 藤田省三「天皇制国家の支配原理 序章」1956年『藤田省三セレクション』(平凡社、2010年)。 「政治権力の装置」かつ「日常的生活共同態」である近代日本国家。前者において前提とされる社会的対立(と、そのうえでの政治統合)は、…

国体と社会―遠藤隆吉

・社会学史的位置 ・総合社会学と純粋社会学の分離に貢献(米田以上に) 高田保馬「「社会学原理」の前後」日本社会学会編『社会学』第8号(岩波書店、1941年)。 ギッディングス―ジンメルによって「社会の還元すべからざる事実」を扱う純粋社会学と、それの分化…

有賀長雄・加藤弘之ほか

・社会進化論と社会有機体説 ・左古輝人「社会概念の再検討」『人文学報』43号(2008年) 社会学が社会と国家を同一視してきた、という批判にこたえて。社会有機体説が国民国家を社会進化の現段階として肯定的に評価してきたのは事実であるが しかし当時、社会…

「社会現象」という観念

・久松義典「何をか社会の顕象と謂ふか」『社会之顕象』第一号(1888年) 顕象=現象。この論文が掲載された『社会之顕象(英題SOCIAL PHENOMENA)』に対して久松が期待することについて。 「浅草公園の富嶽」から観察される行人車馬の来往(=有形的事物の状態)…

大杉栄

クロポトキンの翻訳者である大杉。相互扶助は「互いを守るもの」であると同時に、「互いから互いを守るもの」でもある。これは「一切の社会には、必ずその両極に、征服者の階級と被征服者の階級とが控えている」という見解からの帰結。 「社会か監獄か」1913…

幸徳秋水

・問題的なる「社会」と「社会的人権」―政治的権利から社会的権利へ 封建遺制ではなく、「現在の」社会に問題の根源を見出す社会学的視線。 ・「教育界の迷信」1898年『幸徳秋水全集』第2巻(明治文献、1970年) 教育の社会近時益々繁劇を加へ来れり、教育問題…

中江兆民

・中江兆民における「社会的生活」と「懇親会」 ・中江兆民「懇親会」1888年(『中江兆民全集』11巻、岩波書店、1984年)。ここでいう「懇親会」については、全集11巻の解題(松永昌三)で次のように述べられている。「懇親会と称して、民権派人士の会合が各地で…

大正時代における家族と社会

・沢山美果子『近代家族と子育て』(吉川弘文館、2013) ・「家庭」「子ども」イメージの形成が明治20年代に進行。 →主婦によって担われる慰安の場としての「家庭」、「家庭の天使」としての無垢な子ども観。こうした「家庭」観はこの時点では現実的な基盤をも…

社会概念史(大正・昭和)

経済 参考:加瀬和俊『失業と救済の近代史』(吉川弘文館、2011年)。 明治後期に労働問題が顕在化した理由について。 (1)明治前期において雇用労働者の大多数は若年層であり、年齢が進行するにつれて自営業化するというライフコースが一般的であった。しかし…

米田庄太郎について(研究史・社会問題論)

・米田社会学への評価 「未完の体系」への関心 ・河村望『日本社会学史研究・上』(人間の科学社、1973年)。 〔米田社会学では〕ジンメルにおける社会有機体説、総合社会学批判と結びついた、社会学の固有な対象領域を求める試みは十分理解されず、ジンメルの…

近代日本思想史とエネルギー概念

【先行研究】 ・19世紀におけるエネルギー保存則の確立 小山慶太『漱石が見た物理学』中央公論社、1991年。 熱と仕事の等価性に関する実験(1847年)、熱から電流への変換(1821年)、ファラデーによる電磁誘導の発見(1831年)…「というわけで、1840年代に入ると…

法と社会

【明治期の社会防衛主義―過渡期の理論として】 ・刑法の道具的理解 富井政章『刑法論綱』1880年(信山社、1999年) 要するに刑法は一国社会の秩序安寧を維持するの要具に外ならす社会先つ平穏ならす内より其秩序安寧を害することを得は如何して其独立と進歩を…

「実証」の概念史

・先行研究 positiveという言葉はラテン語の動詞pono(英語ではsetに相当)に由来し、その過去分詞positumが形容詞化されることでpositiveになった。これが「事実的」「実証的」という意味を持つようになったのは、木田元によると弁神論に由来するという。弁神…

「社会」概念の歴史に関するメモ

最終更新2014/10/5 ざっくりした通史 http://togetter.com/li/527959 大正時代の「社会の発見」について以前書いたもの http://d.hatena.ne.jp/tukinoha/20110128/p1 大正時代の分は以下に移行。 http://d.hatena.ne.jp/tukinoha/10000109 【方法について】 …

日本精神治療小史‐京都・岩倉村を題材に‐

近代の世界史をきわめて巨視的に捉えるならば、西ヨーロッパ発の産業革命・市民革命が世界的な広がりを見せ、全世界が資本主義・国民国家という均一のシステムに覆われる過程である、ということが出来るだろう。もちろん事実上存在する国々は、それぞれの歴…

エドワード・W・サイード『知識人とは何か』

知識人とは何か作者: エドワード・W.サイード,Edward W. Said,大橋洋一出版社/メーカー: 平凡社発売日: 1995/05/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (3件) を見るウェーバーの「精神なき専門人」という官僚制についての規定は…

ジャン=リュック・ナンシー『無為の共同体』

無為の共同体―哲学を問い直す分有の思考作者: ジャン=リュックナンシー,西谷修,安原伸一朗出版社/メーカー: 以文社発売日: 2001/06/15メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 51回この商品を含むブログ (29件) を見る過去に2回ほど挫折したのだけど、今回はな…

岡真理『記憶/物語』

記憶/物語 (思考のフロンティア)作者: 岡真理出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2000/02/21メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 43回この商品を含むブログ (50件) を見る記憶とは本人が所有する(だけの)ものではなくて、フラッシュバックのように制御不能…

安丸良夫『出口なお』

「出口なお」―女性教祖と救済思想 (洋泉社MC新書)作者: 安丸良夫出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2009/05/02メディア: 新書 クリック: 14回この商品を含むブログ (5件) を見る『出口なお』は、安丸の最高傑作という人もあれば、あれはもう歴史学ではないとい…

萱野稔人『国家とはなにか』

『国家とはなにか』作者: 萱野稔人出版社/メーカー: 以文社発売日: 2005/06/17メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 142回この商品を含むブログ (118件) を見る整合性のとれた美しい論理で書かれた、これから国家を語る上で必読と言える一冊である。ただ、…

栄沢幸二『「大東亜共栄圏」の思想』1995.12

この世に「正しい戦争」というものは存在しないが、だからといって全ての戦争が等しく悲惨で救いがないというわけではない。正しくはないが避けられない戦争というものがあり、また、戦争によって人々が多少はマシな状態になることがあるのも確かだ。戦争が…

片山杜秀『近代日本の右翼思想』

近代日本の右翼思想 (講談社選書メチエ)作者: 片山杜秀出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/09/11メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 210回この商品を含むブログ (43件) を見る日露戦争後から第二次大戦までの右翼思想を包括的に扱おうと試みた、意欲的…