森山大輔『ワールドエンブリオ』

最近少年画報社の漫画ばかり買っている気がします(『ナポレオン』とか『僕らはみんな河合荘』とか)。『ワンブリ』は最近になって読み始めたのですが、1週間ほどで既刊を全て読んでしまいました。とりあえず絵柄が気に入れば買って損はしないと思います(個人的にはいまいちフェティシズムが刺激されない、綺麗すぎる印象を受けますが)。個人的には7巻が面白さのピーク。現在はクライマックスに向けて風呂敷をたたみ始めているところですが、人間関係をめぐる魅力的なドラマが複雑な設定に食われて消化不良を起こしている感じがします。
ストーリィをかいつまんで述べておくと……
ある日突然姿を消した姉代わりの女性「天音」。廃病院で見つけた大きな繭。その繭から生まれた子供「ネーネ」は幼いころの天音と瓜二つの顔をしていた。ネーネを育てれば天音に関する手がかりが得られるかもしれない、というわけで主人公はネーネと家族になり、愛情を注ぐ。一方、普通の人間よりもずっと速くネーネは成長し、それに伴って主人公が自分に向ける気持ちを理解できるようになる。
作中で経過した時間はだいたい1年くらいですが、そのなかでネーネの姿は2歳児くらい〜17、8歳くらいまで成長します。主人公が小さなネーネにかけた言葉の真意を、成長したネーネが気づいてしまう。ネーネの姿がどんどん変わっていくのは見ていて面白いですし、お話の動かし方としてもユニークかつ説得的で良いですね。しかし、ネーネとはいったい何者か、みたいな設定の部分に深入りして、主人公・天音・ネーネの関係性をめぐる物語がどこかに行ってしまったような。
個人的にはネーネが家出するエピソードなんかが好きなんですけど、「主人公とネーネの関係にはこういう可能性もある」ということを示す以上の意味はなかったようで。羅列的というか、こういう考え方もある、こういう可能性もあるということを片っ端から列挙していく。そのなかには正解も含まれているのですが、列挙されたものを眺めているうちに、何が問題だったかを忘れてしまう。よく練られた物語だと思うのですが、私はもうちょっとシンプルで独断的な話の方が好みかなぁ。