『D.C.〜ダ・カーポ〜』

更新を休んでいる間に宮崎なぎさ監督の『D.C.〜ダ・カーポ〜』を見返していました。通して10回以上見ているはず。このアニメの何が凄いって、時には200カットを割るんじゃないかというくらいワンカットを長くして、十分に「タメ」をとっているところです。かといって『RED GARDEN』や『紅』のようにロングショットからバストショット主体にして演劇的な方向へと進んでいくのではなく、極端なクローズアップの「ほとばしる止め絵」を多用する「アニメっぽさ」を見せている。おそらくは苦しい制作事情に由来しているのでしょうが、このアンバランスさが作品のオリジナリティになっていると思います。
そして何よりもシナリオが素晴らしい。三角関係というありふれた題材の中に、誰よりも互いのことを理解しているからこそ対立するのだという、逆説的な友情のあり方が描かれています。

「小さい頃から、ずっと兄さんとさくらちゃんを見てた。さくらちゃんがどれくらい兄さんのことを好きかも、痛いくらい感じてた。だから、もしさくらちゃんに兄さんを取られてしまったら、兄さんを永遠に失ってしまう。そう思うと、怖くてたまらなかった」
「僕も一緒だよ。音夢ちゃんがどれほどお兄ちゃんが好きかわかるから、音夢ちゃんにだけは渡したくなかった」
「私たち似てるね。鏡で自分の姿を映すみたいに……。さくらちゃんは私を、私はさくらちゃんをずっと見てきた」
「でも、だからって!こんな風に音夢ちゃんやお兄ちゃんを苦しめるつもりなかったのに!」
「わかってる、そんなのわかってるよ……」

後半は名言・名シーンのオンパレード。「友情」と「三角関係」だと『おねがい☆ツインズ』なんかも興味深い作品ですが、これほど深いレベルでの心の繋がりは描けていないように思われます。また、主人公の人物造形も良かったですね。一言でいえば実に誠実な人物。ちょっととぼけた感じで、良い子ぶらないところも好感を持てます。原作およびセカンドシーズンの主人公には「調子に乗るなよ!」と言いたいくらいでしたが……。
けちをつけるとすれば、OPのパンチラで心がくじけてしまうことと、序盤の数話は実写のミュージッククリップで時間を埋めていて、それが激しく鬱陶しいことくらいでしょうか(もちろん野川さくらが出ているやつは除く)。

D.C. ~ダ・カーポ~ DVD-BOX 1

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