『ゲートキーパーズ21』についての雑感

高度経済成長期を舞台にした前作から時間は流れ、2001年。人の醜い心に住む怪物「インベーダー」と特殊な力を持った人間「ゲートキーパー」の戦いは続いていました。主人公は2人。ひとりは無口で無愛想、他人と意識的に距離を置こうとする「最強」のゲートキーパー。もうひとりは、ただウサギのように飛び跳ねることしかできない「最弱」のゲートキーパー。この二人の戦いを通して「戦いの向こう側」にあるものを描く、GONZO製作のOVA全6話。

「行くよ。名誉挽回しに。
それと……もっと面白いことしに」
 -第6話-

ゲートキーパーズ21 DVD BOX

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前作において描かれていたのは「戦い」そのものであり、「日常」とはそこへ向かうための出発点でした。で、続編である『21』はその反対、「戦いの向こう側」にある日常の価値をいかにして高めていくかという話です。こうして比較すると時代設定が上手いなという感じが。仮に両方の時代設定を入れ替えたとしたら、全然リアリティがないと言われるでしょうね。前作の隙間を縫うように、テーマが被らないように物語が作られているという点で、僕は『21』を理想的な続編だと思います。
設定や行動の動機をあまり描かないという点では前作と同じなのですが、それが不満に感じられない、むしろ洗練されているという印象を受けさせる点がこの作品の持ち味でしょう。前作では単なる戦いの道具でしかなかった「ゲート」に解釈が施されるなど、筋の通らないものをそのままにしておかない、実に内省的な作品でもあります。
どうして僕はこの物語に魅かれるのだろう?と考えたとき、絶対に外せないポイントは作品全体に漂う閉塞感だと思われます。ひとつひとつの台詞だけでなく、最終話まで解決することのカタルシスを与えない物語構造、低い天井、どんよりとした空、これらを通して作品全体を覆う閉塞感が伝わってくる。この世界はどうしてこんなにつまらないのだろう?そう思う主人公に共感してしまう。
この作品の二人の主人公は両極端の立場にいます。ひとりは最悪な世界に順応し、ひとりはそれに敵意をむき出しにする。どちらも幸せではありません。ではどうするべきなのか?安易なアンサーを制作者は与えようとせず、物語は加速度的に破滅へと突き進ます。結局ぎりぎりまで答えは出ないし、ある意味では最後まで答えは出なかったとも言えるでしょう。あまり必要性の感じられない人物が出てくるところなんかも、イマイチな点かもしれません。
そういった多少の欠点はあるものの、非常に誠実な現代劇という印象を僕は受けました。単に世界を嫌悪するのではなく、その敵意が、汚らしい世界の中でなんとなく生きる自分自身へも振り向けられる。それがモノローグで語られる間、物語は静止します。「流れるような」物語とは、ちょっと遠いところにある作品。しばしば立ち止まり、考え込んでしまう。堂々巡りの閉塞感。画面もなんとなく狭苦しい。でも、それが今の時代には相応しいもののように思えたのです。
前作と『21』、どちらの方が優れているかという話ではありませんが、時代が近い分だけ前作より『21』の方が感情移入しやすいのではないでしょうか。前作が合わなかった人にも、いや、合わなかった人にこそオススメの作品です。前作を見ていないと楽しめないという性質の作品でもないので、こちらから入るのも良いでしょう。


初稿:2007/3/28 改稿:2009/5/3