『A KITE』

もはや単なるインタビュー集となった『オトナアニメ』を読んでいたら、倉田英之氏が「だいたい、『オトナアニメ』っていうなら本当に大人向けのアニメを載っけてくださいよ」と書いてて、本当にそうだなぁ!と思ったので18禁アニメの話をすることにします。

A KITE PREMIUM COLLECTORS VERSION [DVD]

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良くも悪くもB級らしさが炸裂する、梅津泰臣監督作品。見所はもちろんアクションシーンですが、ビルから落下して地面に叩きつけられるシーンとか、そのあと爆風で飛ばされるシーンとか、「死ぬだろ普通!」という状況でも生き残る主人公は頑丈すぎます。爆発のエフェクトや破片が飛び散る姿は思わずコマ送りで視聴。こういうとき、「凄い!」と思うより先に「こんなに細かいパーツを動かして……」と気が遠くなる自分に作画オタクの素養は無いのでしょう。
回想シーンの禍々しい色使いは面白いですが、構図やカット割りはそれほどでもなく、演出は全般的に平板。続編の『KITE LIBERATOR』の方がずっと上手いと思います。無国籍風な都市の描写が外国で受けるのは何となく理解できるものの、いい加減マンネリ気味で、作品固有の世界を提示するには至っていません。アクション映えする(壊し甲斐がある)のは確かなんですけどね。シナリオも時代小説的なモチーフの古さと回りくどさが鼻につく上に、永遠をガラスケースの中に閉じ込めるようなオチもどこかで見たような話。この平凡さに比べれば、未完成品だと散々叩かれた『KITE LIBERATOR』の方がはるかに現代的で面白かったです。一般的な意見からは盛大にズレているのかもしれませんが、蝋燭の火がふっと消えるような終り方が良かったなぁ、と。
冒頭に書いたとおりエロアニメなんですが、『KITE LIBERATOR』のオーディオコメンタリでも梅津監督が語っているように、エロさえ入れておけば多少の無茶は出来ると、そのくらいの理由なので無理にオリジナルのR18版を見る必要はないかもしれません。音楽や人物造形によっていかにもポルノらしい雰囲気を盛り上げながら、セックスの内容は至ってノーマル。凡百のアダルトアニメより圧倒的に手がかかっているのは確かですが、雰囲気だけ味わえばそれで十分という類の作品であると僕は思います。なのでR15の海外版でも問題ないでしょう。テンポはむしろ良くなっています。


次の機会があれば、レンタルビデオ店で見つけた『.fuck』の話でもすることにしましょう。一体どういう層をターゲットにしているのだろう……。