『Manie-Manie 迷宮物語』

みんなが新番組の話題で盛り上がっている時期に、空気を読まず旧作の話。今回は『ハイランダー』の公開を週末に控えた川尻善昭監督の短編「走る男」が収録されたオムニバス映画『迷宮物語』についてです。僕はつい最近までOVAだと思っていました。

迷宮物語 [DVD]

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導入の「ラビリンス*ラビリントス」はりんたろう監督。この時期のアニメって、みんなが競うように背景動画を描いていたという印象があるのですが、この作品もやはり動く動く。冒頭に猫が出てきて廊下を駆けていくシーンでは、猫の動きに逆らうように廊下がうねうねと捩れていくところがすごく良かったです。勢いをそのまま絵にしたような演出ですね。少女が階段を登るシーンでは、階段を登りきるまで壁が消えています。壁の向こう、階段を上った先、ガラスの中。そういった「境界」の向こう側にある世界を想像力たっぷりに描き出したかと思えば、何気ない日常動作を極端に誇張して描いたりもする。何にせよ、視点の置き方が秀逸ですね。話はあってないようなものですが、話はつまらない方が作画に集中出来て良い、と偉い人が言っていたので気にしない。『迷宮物語』ではこの作品が一番好きです。


次の「走る男」は川尻善昭監督。セリフの半分は顔面までマッチョな男の「お、おお……」という唸り声です、と誤解されそうな書き方をしてみる。割とありふれた話ですが、設定にほとんど触れず、ひたすら破壊だけを描いている点は非常に潔いかと。あと、当然の話ですが、これだけのアクションと光を、セル画とフィルムだけで作っているというのが凄いですよね。デジタルを手にした『ハイランダー』がどうなっているのか楽しみです。


最後は大友克洋の「工事中止命令」。『AKIRA』以前の作品ですが、背景の緻密さやブラックユーモアのさじ加減は大友漫画の雰囲気を最も良く伝えていると思われます。ただし原作は眉村卓(上の作品も)。眼鏡と出っ歯の日本人(時代を感じるなぁ)を主人公にした、この連作では唯一起承転結のあるストーリィ。よくまとまっているだけに、ちょっと印象が薄いかも。むしろ、ドロッとした泥(駄洒落じゃないですよ)や、レンチから垂れたオイルの感触が印象的です。