『ひだまりスケッチ』に見る「面白さ」の問題
筒井康隆がどこかでこんなことを書いていました。
「夢を小説にすることに文学的価値はあるのか?『ある』と言えるようになるまで、私は40年かかった」
巨匠・筒井康隆でさえ40年かかったというこの問題。筒井先生が自身の夢を小説化した『エロチック街道』『遠い座敷』という2短編を読んでから、僕は「おそらくは価値があるのだろう」くらいに思っています。しかし、なぜ価値があるのかは説明できません。
少なくとも、現代的な作品における「面白さ」は話の筋書きから来るものではない、と考えています。作品に密着し、構造を読み取り、読者自身が作品から価値を見出すこと。そういった積極性がなければ見逃してしまう「面白さ」があるのではないでしょうか。
そこで今回は『ひだまりスケッチ』という作品を取り上げたいと思います。
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実は、当初はそれほど面白いとは思いませんでした。ぽんぽんとギャグが飛ばされるのですが、それが肌に合わないというか、光るものを感じなかったんですね。
しかし、第5話を見たあとから評価が変わってきました。5話では延々とゆのが夢の中を彷徨うのですが、明確な筋がない分、演出に集中して見られる話です。それで、これは凄いな、と。新房昭之監督作品なのですが、『ソウルテイカー』や『ぱにぽにだっしゅ!』と同じくコントラストの強調やちょっとズレた色遣いなど、見るべきところが多いですね。
会話がやたら遠回りだったりして、現実をそれほど逸脱しないシナリオ。それでいて、先述した演出や、あえて時系列をバラバラにした構成はいかにも物語性を強調する方向へ働いています。やっぱり故意にやってるんだろうなぁ。アニメの「お約束」や「ベタ」に対して自覚的なのでしょう。
この手の作品を前にすると、作品ではなく自分が計られているような気分になりますね。それもまたひとつの「面白さ」ではないかな、と僕は思います。
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