最近の「メタご都合主義」作品について
よほど売れているのか近所の書店では全然見かけなかった、丸戸史明のラノベ『冴えない彼女の育てかた』をようやく読了。私には正直合わなかったのですが、オチはものすごく丸戸らしかったですね。
- 作者: 丸戸史明,深崎暮人
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2012/07/20
- メディア: 文庫
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虚淵玄のご都合主義は、後味が悪い上に、廃墟と人々の犠牲で成り立つもので、
田中ロミオのご都合主義は、やたら強引にハッピーエンドへ持っていくのだけど、ご都合主義の内部には明確なルールが存在していて、
丸戸史明のご都合主義は、周りの人々の親切心によって作られていて、主人公とヒロイン以外はあまり得をしない。
といった感じでしょうか。彼らはそれぞれ異分野に参入するにあたり、自分たちがこれまで書いてきたことをメタ的に新しい作品に持ち込むという、ある意味もっとも無難な方法を選んだということなのだろう、と思われます。
ところで最近のエロゲではminoriの『すぴぱら』が面白かったのですが、この作品で試みられた「『登場人物は実在の人物をモデルにしている』という設定」(ややこしいな)は、現実と物語のギャップを強調する点で上記の作品と近い関心があったのかもしれません。登場人物が実在することを示すためにminoriがtwitterで費やした労力は大したものだと思いますが、そこはあまり面白さにつながらなかったとも思います。結局のところ我々が望んでいるのは「ご都合主義」であって、ご都合主義を相対化する物語も、やはりご都合主義的に進められなくてはならない、ということなのかもしれません。