『るいは智を呼ぶ』についての雑感。

タイトルが私のいままでにプレイしたエロゲのなかで十指に入るほど秀逸だったので、おもわずタイトル買い。ちなみにあとの9作は以下の通りです(順不同)。
最果てのイマ』『腐り姫』『ジサツのための101の方法』『さよならを教えて』『もしも明日が晴れならば』『彼女たちの流儀』『your diary』『家族計画』『最終試験くじら

るいは智を呼ぶ 初回版

るいは智を呼ぶ 初回版

和久津智「この呪われた世界をやっつけよう」

一番よかったのはタイトルで、次に良かったのはキャラクタデザインで、その次が設定に凝りすぎない良い意味での適当さ、でしょうか。舞台の範囲をひとつの街全体に設定した割には、登場人物は少なめで、1度しか出てこないキャラクタというのはいないようです。物語の根幹である「呪い」に関する設定も「その成立から現在に至るまでの歴史」や「そもそも呪いとは何か」などいくらでも掘り下げようはあると思うのですが、さしあたり必要な情報しか書かない。この慎ましさは好ましく感じました。
その反面、もうちょっと上手い構成の仕方があるのではないか……という印象も。本作はマルチシナリオで、かつ全ルートを通らないと真のエンディングにたどり着かないというよくある構成なのですが、本作のような群像劇だと、同じ問題に何度も遭遇し何度も解決することになってしまう。それだと退屈するので問題へのコミットの仕方をちょっとずつ変えていく。すると今度はキャラクタの性格がぶれてしまう(特に金髪お嬢様)。『ひぐらし』とか『シュタゲ』は各シナリオを越えて引き継がれる経験値のようなものを設定することで性格の変化を「成長」として正当化しましたが(成功したかはさておき)、本作に関してはいっそシナリオを完全な一本道にしてしまった方が良かったのではないか、と思いました。
あと、さんざん言われていることですが共通ルートの文章がくどすぎます。会話がしばしば脱線して、しかも脱線したことに言及してさらに脱線する。ちょうどお偉いさんのスピーチで「今日はあまり時間がないので簡単に話します」という余計な前置きでさらに時間がなくなってしまうように。個別ルートは比較的良いのですが。
一応シナリオの内容にも触れておくと、物語は友情ものの王道をひた走り、喧嘩したり仲直りしたり、傷つきながらも繋がろうとする意思を肯定する方向へ。主人公たちの「呪い」がどれも他者との接触を困難にする類のものであるのはこのためでしょうが、実は例外もあって、やや中途半端(ヒロインではないサブキャラの「呪い」)。「呪い」の対価としてある「能力」を活かした冒険活劇としても読めるのですが、どの能力も便利すぎて逆に盛り上がらない……。
オチは全然ダメだと思います。この世界が呪われていることを言わんがために誰かの生と誰かの死を天秤にかけ、結局天秤の片方を選んだ(選ばされた)主人公はまったく「この呪われた世界をやっつけ」ていないと思うのですが。
なお、女装主人公は「せっかく可愛い女の子を揃えた世界を作ったのだから、むさくるしい男性主人公を画面に入れるのはもったいない」くらいの考えなのかな、と。