『ヨスガノソラ』についての雑感


更新をさぼっている間も今季のアニメを見たり、少し前のアニメをDVDで見たりしていたのですが、その中で一番いいなぁと思ったのがこの作品。ギリギリセーフ、いや、アウト?な性描写で話題をさらっていったという点で記憶に新しいのですが、これ、普通によく出来た作品ですよね。私からすれば、性描写で話題になったことは逆にもったいないなぁ、とさえ思ってしまう(余計なお世話ですが)。
まず、OPが秀逸。演出家の作家性は短い作品でこそ発揮されるものですから当然なのでしょうが、本編の演出から受ける印象がぎゅっと濃縮されています。OPを見て気に入ったのなら、本編もおそらく気に入るでしょう。タイトル通り「空」が印象的。OP曲のサビに移るときに現れる青空、本編の物語が佳境を迎えた時に現れる夕焼け空、結末の夜空。淡々と、しかし抒情的な演出のなかに挟み込まれる、吸い込まれるような「空」の描写には、思わずはっとさせられます。
物語は割と平凡で、いろいろ問題を抱えた女の子と主人公が、なんだかんだあって結局上手くいく、みたいな手垢のついた話。ただ、見せ方が上手いので結構見られてしまう。終盤の「春日野穹」編(主人公の妹)なんてよかったですね。妹が主人公の名前を呼びながらオナニーしているところを、ほかでもない主人公が見てしまうわけですが(ご都合主義的ですねー)、その主人公の反応が「口を押え、声を押し殺しながら泣く」というものだったことが、妙に印象に残っています。
最終的に主人公と妹は結ばれるのですが、知り合いにもバレてしまい、ほかにも色々あって、二人は外国へと旅立っていく。二人が幸せそうに電車のなかでイチャイチャするシーンで物語は閉じられる。第1話の冒頭も電車だったので、最初と最後で円環をなしているわけですね。しかし、そのことはむしろ、変わってしまった部分を強調します。主人公と妹は物語の舞台から去っていくのですが、残された人々は変わらざるを得ない。主人公がいなくなったことで仲間たちは疎遠になり、ある少女は主人公のことが好きだったのだけど、彼が妹に手を出したことを知って泣き腫らす。「気持ちがあれば、何をしてもいいんですか!?」という彼女の言葉に続いて現れるのが、先述した主人公と妹のイチャイチャするシーン。そういう毒の盛り方が上手いなぁ、と思いました。