劇場版『そらのおとしもの』についての雑感

遅ればせながら観てきました。最初に感想を言ってしまうと、部分部分ではとても楽しいのだけど、作品全体としてはちょっと……といったところ。最大公約数的な意見を言うのもどうかと思うのですが、中盤の面白さに比して、序盤と終盤が圧倒的に弱い。詳細はネタバレなので省きますが、特に終盤、いまどき「俺たちの戦いはこれからだ」みたいなオチをつけて何になるのか。原作と違うことが悪い、というのではなく、アニメ第一期から第二期にかけて少しずつ原作を変えていき、そのしわ寄せが劇場版になって現れ、それを取り繕おうとした妥協の産物にしか見えない(ニンフの扱いとか)。終盤に智樹を助けるため守形先輩が出てくるのも、よく考えると不思議ですね。序盤は序盤で、せめて視点を統一すれば意味のある話になっていたのに、頻繁に視点が移動するため、単なる時間稼ぎの総集編になってしまっている。テレビ版を見ていない人もこれで大丈夫、というわけでもない。
ただ、中盤には面白いところがたくさんあって、原作をうまくアレンジして使っているなぁ、という印象を受けました(特に冒頭)。それと、風音日和役の日笠陽子さんは最高に良かったです。違和感がなさすぎて驚いたくらい、日和日和してます。理屈抜きに、無条件で応援したくなる声ですね。いったい智樹のどこに惚れる要因があったのかさっぱりわかりませんが、日和がいい子なので仕方ないかなー、みたいな(意味不明)。あと、全般的にニンフが贔屓されてる気がするのは私だけでしょうか(可愛いからいいけど)。
鑑賞後の割り切れなさを除けば、ということはクライマックスにたどり着くまでは結構楽しめる作品だけに、名作になり損ねた佳作という感じがします。日和の設定を掘り下げることができれば(一時退場から再登場の間を描ければ)面白いのでしょうけど、原作が未完なだけにそれも難しく……。第一期最終話のニンフ、第二期8話のイカロスのように、キャラクタの設定を掘り下げた結果出てくる面白さはあまり感じられませんでした。ニンフの「インプリンティング」に関する話も、すごく中途半端になってしましましたし。
まあ、日和がいい子なので仕方ないかなー、と思うのですが(しつこい)。