アニメOP・ED映像論(試論)

現代のアニメ製作において音に映像を合わせるプレスコが行われているのはOP・EDくらいで、それ以外の部分は映像に音を合わせるアフレコが主流になっています。ただ、そのような「(残念ながら)珍しい」部分であるだけに作り手の才能が良く現われる部分でもあるわけで。
そこで今回は「OPだけ見て、本編を視聴するか決めよう」という忙しい人に向けて、OP/ED映像の簡単な分類と、注目すべき点についてまとめてみました。タイトルに(試論)と付けたとおり完璧ではありませんが、参考にしていただければ幸いです。カテゴライズって批判されるためにするようなものですよね……
ちなみに「アフレコ」というのは日本語で、英語だと「ポスト・レコーディング」だそうです。略すとポスレコ(ポスコロの親戚か)。


タイプ1.シンクロ
詞のイメージをそのまま映像化するという方法が考えられます。その典型的な例として『Avenger』のOPが挙げられるでしょう。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm327835

はっきり言って、僕はこのOPが全く好きではありません。音楽だけの方がずっと良い。このタイプでは詞と映像が互いにフォローし合うことでひとつの豊かなメロディーを奏でることが出来る反面、映像それ自体に力がないと逆に足を引っ張り合ってしまうという問題もあるわけです。
もうちょっと好きなのが『Venus Versus Virus』のOP。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm476414

詞に登場するモチーフを直接描くよりは、詞あるいは音楽の大意をつかみ、何かに置き換えて描く方が面白いことが多いようです。もちろん、そうすることで映像の個性が前面に押し出されるわけですから、単純なようで難しいタイプだと言えるでしょう。


タイプ2.対位法
暗い歌に楽しい画、明るい歌に暗い画という風に、あえて音楽のイメージと反発しあう映像をつけることで、かえってお互いを引き立て合うということがあります。ただし、これは「悲しい」というフレーズに笑顔の映像をつけることを意味するわけではなく、曲全体のイメージに映像を対応させるのが一般的。この例はあまり多くありませんが、『まなびストレート』のOPを挙げておきましょう。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm111512

比較対象として、コードギアスのOP曲と差し替えたヴァージョンも。

先に挙げたシンクロ型の場合、詞が一貫したイメージを作り上げ、映像はそれに依存しているため、映像それ自体の一貫性はあまり求められていません。しかし、対位法型の場合はそうもいかない。ただでさえ音楽と映像とがバラバラになってしまう危険を抱えているので、映像に一貫性がないとさらに酷いことになってしまいます。
このタイプに要求されるのは、音楽のイメージから付かず離れずもう一本のイメージを作り上げること、それを(当たり前ですが)音楽と同期させること、この2点であると考えられます。


タイプ3.楽曲のイメージ先行
歌詞や本編の内容からやや離れ、楽曲のリズムやイメージを優先して映像を作るタイプ。『涼宮ハルヒの憂鬱』EDや『らき☆すた』OP、あるいは『ギャラクシーエンジェる〜ん』のOP辺りが真っ先に思いつくところですが、あえて『sola』のEDを例として挙げておきましょう。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1923848

これも後述するタイプ⑤と同じく作品のイメージを大切にしていますが、それ以上に情景の美しさで魅せる作品です


タイプ4.キャラクタ紹介
音楽と同期させる形で本編の主要キャラクタを映像化する、おそらくギャルゲ原作アニメに多いタイプ。『CLANNAD』のOPがその典型的な例です。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1170307

欠点としてはちょっと説明臭くなりがちなところ、それとリズムが単調になりがちなところでしょうか。もちろんギャルゲでも『最終試験くじら』OPのように、しっかりキャラクタ紹介をやりながら、しかもそれを嫌味に感じさせない秀逸な作品もあるわけですが……。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27809

このタイプの作品には、キャラクタの外面的な描写に留まらず、内面的な部分まで踏みこむことを求めたいですね。『ef』のOPがその点で非常に良かった。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1391741

新海誠曰く「たとえ日常の風景は平凡であってもそこに生きる人々の内面はドラマチックであり得るという、まあ当たり前なことがらを、まさに風景なしでスタイリッシュに、どこか切なく魅せてくれる素晴らしいOPです」とのこと。全く同感です。


タイプ5.作品テーマ紹介
本編の伏線を張ったり、メインテーマをさりげなく提示したりする、おそらく最も多いタイプ。他のタイプに収まらないやつはみんなここに入れちゃえ!という気持ちで作ったカテゴリなので例を挙げるのが難しいのですが、あえて『NOIR』のOPを挙げておきましょう。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1926771

このタイプの映像はそれこそ千差万別ですが、音楽と同期させる方法はほぼ共通です。カットのつなぎを音楽のフレーズに合わせる方法、あるいは音の強弱、リズム、特定の楽器に画面の動きを合わせることで一体感を生み出すというのが主なところ。


というわけで、いくつか典型的な例を挙げてみたわけですが、大半の作品はどれかひとつにカテゴライズされるようなものではなく、複数のタイプを横断したものです。なので、あえてひとつのカテゴリに分類するよりは、作品を構成する多様な要素を分解する手段としてこの記事を使ってもらえればと思います。
書きながら飲んでいたワインの酔いが回ってきたので、今日はこのくらいで。