劇場版『空の境界』第1・2章をまとめて見てきました。


前日の夜行バスに乗って東京入りし、映画3本と東博を見てさっさと帰りました。「ローマ皇帝伝」風に言えば「来た(東京に)、見た(空の境界を)、買った(グッズを)」という感じ。あと、朝7時半からテアトルダイヤに並んで第1章を見たのですが、自分の前に2人並んでいたことに若干引きました。上映は9時40分からですよ……。以下、本編についての話。


まずはストーリィについて。
原作よりはわかりやすいし、恋愛ものとしての側面が強調されているのもキャッチーで良い感じです。
しかし、説明口調が結構気になります。そういう作品だと言われればそれまでなんですが……。「探偵が 皆を集めて さてと言い」的な様式性は映像にすると少し野暮ったい。もちろん原作と比べればスリムになってはいるのですが、わざわざ選んで難しい言い回しをしたり、いきなり「幻視」講座をはじめたりと、みんな良く喋るなぁという印象。
ガンダム』の登場人物も良く喋りますが、あれは戦闘中の異常なテンションに載せられているのであまり気にならない。『空の境界』は静かに座りながらなので、冷めた目で見てしまうんですよね。
ただ、見所であるアクションへの運び方は非常に良かった。例えばレインコートを着た式がエレベータに乗り込み、無言で最上階へと向かうシーン。基本的に台詞のないシーンが面白かったです。


次に作品のバックボーン的な部分について。
まずは背景についてですが、これは明度の高い人物との対比による効果もあるのでしょうが、精緻な背景はややレトロな感じがして凄く良かったです。この辺は劇場作品の特権だよなぁ、と思いながら見ていました。
もうひとつ凄かったのが水の表現。流れる河や水しぶき、あるいはコーヒーで満たされたマグカップの表面。気合の入った作画と特殊効果の相乗効果で非常に滑らかでした。OVAテイルズオブシンフォニア」でも海の描写がかなりリアルだったので、ufotaleにとって得意とする分野のようです。
続いて人物の描写について。
第1章の中盤に、主人公の式がハーゲンダッツを食べるシーンがあります。普通、ものを食べるシーンでは胸から上だけを映せば充分なんですけど、ここでは何故か全身を映してしまう。スプーンを口に運ぶ手の動きが肩から腰へ、そして足の先へと伝わっていく姿を精彩に描写しているのです。地味ですが、非常に印象的なシーン。
ただ、このような描写がかえって足枷になる場合もあります。例えば第2章、幹也が竹林の中を全力疾走するシーン。ここでも同じように動きの細かさ、リアルさが追求されているのですが、それによって逆にしなやかさが失われていることに気付かされます。どうしても映像をコマ送りで見ているような、ギクシャクとした走り方に見えてしまうのです。
あと、カットの繋ぎ方(トランジッション)がやや「硬い」という印象を受けました。フェード、ディゾルブ、ワイプなどの「やわらかい」トランジッションはほとんど使われていなかったはず。その代わりに小道具や体のパーツを捉えたカットが異なるカット同士の接着剤として多様されていましたが、やや安直かもです。これは同じ日に「雪の女王」を見たせいかもしれませんが……


ちなみに第2章のラストでは、これからの物語の鍵となる人物が少しだけ登場します。声優は中田譲治。僕はいつ「では教育してやろう!本当の吸血鬼の闘争というものを!」と言い出すかと思ってドキドキしましたよ……