『らき☆すた』第6話のお風呂シーンについて

アニメに限らず映像作品の重要な要素として「覗き」というものがあります。下世話な話ではありますが、キャラクタは視聴者の目が届く範囲内に配置されるけれど手は届かない、演劇のように役者からの視線を感じることもないというわけで、視聴者とキャラクタの間には双眼鏡で覗いているような一方的かつ距離を置いた関係が築かれるわけです。
ただ、「誰かの視点」から描くことで覗いている感というのはだいぶ減少出来るでしょう。その辺はまあ、経験的に使い分けられていると思います。またまた下世話な例を出すと、エロゲの日常パートではヒロインの視線を直接プレイヤに向けることで作品の中へ誘い込むけど、えっちぃシーンではヒロインがあさっての方向を見ているので視姦している気分になる、みたいな感じ。
こういった映像作品の覗き見性をメタ的に映像化したのがヒッチコックの『裏窓』だと思うのですが、その話はまた今度ということで。えーっと、『らき☆すた』の話でしたね。
そもそも『ハルヒ』2期を作らずに『らき☆すた』を作っているのは「俺たちはこんな平凡な題材でも面白く出来るんだぜ!」的なアピールをするためではないか、と僕は推測というか妄想しています。その面白さのひとつが先述したような視点の置き方、言い換えるなら「カメラ」の動かし方です。背景を書くのが大変だからなのか「カメラ」の動き自体は少ないにしても、アングルが実に面白い。特に第6話のお風呂シーンは見所満載でした。
http://nicopon.jp/video/player/sm292301
みゆきさんによる「塩分と紫外線が髪に良くない理由」講座。話始めはみゆきさんのズームで彼女に興味が集まっていることを強調しているのですが、話が長引き興味が失われるにつれてお風呂場全体を俯瞰するアングルへと移行します。少々ありがちですが、閉鎖空間での孤立無援の状況を際立たせるための俯瞰ショットが効果的に機能した一例だと言えるでしょう。
そしてつかさ・かがみの会話シーン。赤裸々な会話をキャラクタの目と同じ高さの視点から描きつつも、「カメラ」は動かないわ、キャラクタは正面を見ないわで、否応なく視聴者に「覗いている」感覚を与えます。そして最後にこなたが現われて「生な会話だねぇお二人さん」とツッコミ。この時こなたは正面を見ています。さて、こなたは誰に向けて言っているのでしょうね?
というわけで、第6話お風呂場シーンでは映像を撮ること/見ることに付随する「覗き」の性質が上手く利用されていたという話でした。