アニメOP・ED映像論〜『true tears』OPを例にして〜

2008年1月から放送が始まった新作アニメ『true tears』。予想の出来ないドラマ展開と、キャラクタの動かし方がどこかノスタルジックで、とても魅力的な作品です。富山県を舞台にしている、という地元出身者としての思い入れもあるので、今期はこの作品を集中的に取り上げていこうと思います。もっとも、富山県では放送していませんが……。
第1回となる今回は、eufoniusの新曲『リフレクティア』と共に流れるOPに映像について、こちらの記事を下敷きにして分解していきます。せっかくの祝日を『リフレクティア』150回くらい聴いて(まじめに聴いたのは50回くらいですが)、ご飯食べてブログ書いて潰した僕を笑いながら読んでください。めそめそ。
true tears OP リフレクティア/eufonius by もんすぅ - ニコニコ動画

最初に、キャラクタ紹介のための映像という側面から。
『新・アニメ・批評』さんが指摘されているように、「『登場人物紹介』のためのイメージを散りばめるのが鉄板演出」であることは間違いないのですが、何度も見ることになるOPでいかにも「紹介している」風の映像はちょっと辛い。なので、『らき☆すた』OPのように、キャラクタは出しても紹介はしない、映像の面白さだけで勝負する作品というのも考えられるでしょう。しかし、その一方でOP映像がキャラクタのイメージ形成に果たす役割にも注目するべきものがあります。
例えば、『イノセント・ヴィーナス』という作品のOPではキャラクタの心情を描き過ぎなくらいに描いていたため、はっきり言ってネタバレになっています。ただ、話の急展開についていけない視聴者に対して「OPを見て予想出来ないやつが悪い」と言い返すことは出来るでしょう。いや、出来ないか……。
イノセント・ヴィーナス ノンテロップオープニング by ようこ - ニコニコ動画
要するに、ほとんどのタイプのOP映像においては、皮膚よりも深く、骨よりは浅い、そんなレベルでのキャラクタの心理描写が求められているのだろうと考えられます。『true tears』ではどうか。
まず、それぞれのキャラクタの顔を間近で捉えたカットがいくつかあります。この辺は常套手段として、ここでは3人のヒロインを同時に捉えたカットに注目してみましょう。



3人の周囲を360度ぐるっと回るカット。それぞれが背を向けていることから、3人が対立関係にあることを示している……というよりは、誰がメインなのかはっきりさせないことが目的なのでしょう。同じeufoniusの主題歌つながりで『かしまし』のOPもそのような傾向がありました。
あと、この3人の性格上の違い、という点では大きくタイトルを映したカットがわかりやすいですね。

歌詞との関係、という点ではどうでしょうか。冒頭の舞い踊る木の葉が「無数の言葉たち」という歌詞を映像化しているのかな、と思うのですが、まだ正確な歌詞がわからないので保留ということで。


次々と場面が切り替わるのもOP映像の特徴ですが、それをいかに不自然に感じさせないか、というカット繋ぎの技術も見所のひとつです。『true tears』では中盤からの展開に注目。

キャラクタを大きく映したまま横にスライドさせて、連続した風景を映します。その中にもうひとつの小さな画面を作り、再びキャラクタ紹介へ。

この小さな画面の中でも、最後の印象的なカットへの繋ぎでは、キャラクタの視線を媒介にして注意を引きついけています。この辺はさりげなく上手いですね。
もう一点、ひとつのシークエンスの中でのカット繋ぎにも見るべきところがあります。例えば以下のカット。



ひとひらの影も消し去る」という歌詞に合わせて、歩いているカットから振り向いたカットに切り替わる。ここで重要なのは、振り向いたカットに変わる前に、既に「振り向く」という動作が始まっていることですね(2つ目の画像)。前後のカットで動作を一部重ねて印象を強めると共に、スムーズな繋ぎ方にもなっている。いわゆる「マッチカット」のお手本であると思います。はてなキーワードの項目にもなっているので、そちらも紹介。
カッティング・イン・アクションとは - はてなキーワード
しかし、もっともトリッキィで目を引くのは冒頭部分です。



ちらっと見た限りでは空を向いているように見えるのですが、その後ストリングスの盛り上がりに合わせてカメラが上を向いて初めて、最初に見えていた画面が「水に映った空」だということがわかります。
同じように反射を利用したカットが、最後の方にも登場します。

鏡を使って、自然に視聴者のほうへ視線を向けています。でも鏡に映った彼女というのは本当の彼女ではなくて〜、といった想像も可能ではないかと。


以上、簡単ではありますが筆者の気力が尽きたので、OPに関する記事はこれで終わりにして、次回からは本編の話に移りたいと思います。ただ、その前に他のアニメの話もしたいので、『true tears』の話はしばらく後になる予定。ではでは。
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