BLACK LAGOON The Second Barrage

「『人はさいころと同じで、自らを人生へと投げ込む』そう言ったフランス人のことを知ってるか?」
ジャン=ポール・サルトル実存主義派の哲学者。だが俺にグッとくるのは、『3つの籠に5個の卵を詰め込むやつには、早めに風穴を開けるべし』その言葉の方だ」

まだ1期のDVDも出尽くしていないのに、第2期が先に完結するとは……。

第1期までの冒険活劇的な要素はやや影を潜め、社会の矛盾やアンダーグラウンド世界の不条理さといった側面が多く描かれています。
第2期は大きく「双子編」「偽札編」「日本編」の3つに分けられますが、どれも「闇の中に投げ込まれた人々」を主役に据えている点が特徴的です。第1期も十分暗いと思っていたのですが、登場人物たちが望んで闇に溶け込んでいたことを考えると、第1期と第2期は表と裏の関係にあるといえるでしょう。
第2期の中では、なんといっても「双子編」が秀逸ですね。舞台となるロアナプラにやって来た双子の暗殺者は快楽殺人者で、どうしようもないくらいに救いがないのですが、主人公のロックは双子の幼さと生い立ちの悲惨さに同情します。しかし、同情はしても何も出来ず、
「誰かがほんの少し優しければ、あの子達は学校に通い、友達を作って幸せに暮らしただろう。でも、そうならなかったんだよロック。だから、この話はここでお仕舞いなんだよ。ロック」
という言葉に自らを納得させるのです。
ただ、ここでは単なる諦観と同時に、表と裏との境界が非常に不安定だということも示されています。この不安定さが「日本編」へと繋がり、望まずしてヤクザの組長となった少女をロックは救おうとしたのでしょう。この意味で、この2つの話は有機的にリンクしていると言えます。
2つの話を通して、ロックの立ち位置もより明確なものとなります。当初、ロックは自分を「夕闇に立っている」光にも闇にも溶け込まない中立的な人物だと考えますが、本当は夕闇などどこにも存在せず、境界の不安定さゆえに双方を行き来しているのだということが徐々にではありますが明らかになりました。
第1期においては、舞台となるアンダーグラウンドを異化するためにロックの中立性が必要とされたのでしょう。しかし、物語の進行と共に舞台を異化する必要がなくなり、ロックの立ち位置も変化したのだ、と考えられます。原作とは微妙に時系列が組みかえられたことで、そんな立ち位置の変化がより印象的なものになったと思います。
あと、声優陣がめちゃくちゃ凄かったです。快楽殺人者の双子を演じた南央美金田朋子の演技は声優版でも絶賛されたほど。声は朋先生そのままなのですが、雰囲気が……危ない。
今期本当に楽しみだったのはブラックラグーンだけ。ああ面白かった。