主題歌で振り返るアニメ業界2006

2006年も残すところあとわずか。一足早く総括を終わらせて、コタツでみかんを食べながら年末の最終回ラッシュを楽しむことにしましょう。
とりあえず今年放送されたアニメのOP・ED映像の中で最も優れていると感じた10作品を集めました。そこから受けた印象を元に、今年のアニメ全般について書いてみたいと思います。
ちなみに、この記事はやや長いです。単純に主題歌だけ聴きたい方や、俺は高貴な身分なのでようつべなんて見てられねーという方向けにStage6の映像をまとめておいたので、こちらをご覧ください。
まずは『涼宮ハルヒの憂鬱』より、平野綾茅原実里後藤邑子ハレ晴れユカイ
http://www.youtube.com/watch?v=fIn5gwmGIM0&mode=related&search=

今年の作品群の中では、話題性という点では「ハルヒ」のひとり勝ちだったようです。Youtubeなどを媒介とした口コミによって人気が広まり、ある種の社会現象ともなりました。これによって「良いものは必ず評価される」という自信を持った人も多いようですが、「ハルヒ」の類例と呼べる作品がまだ無い以上、Youtubeの宣伝能力に過大な信頼を寄せるのは時期尚早では、という気がします。さらに言えば「ハルヒ」の優れた点というのは「他人に話したくなる」作品構造や「繰り返しチェックしたくなる」演出を施していた点にあるわけです。つまり、「ハルヒ」とYoutubeの相性が良かったからといって、優れた作品全てと相性が良いとは言い切れません。以前「DVDが売れないのはYoutubeのせい」と発言した某社長に各方面から非難が集まりましたが、すべてがまだ霧の中にある以上、某社長の発言にもある程度の理解を示すべきでしょう。


次は『ひぐらしのなく頃に』より島みやえい子ひぐらしのなく頃に
http://www.youtube.com/watch?v=45DQZ_Wak3M

ひぐらしのなく頃に

ひぐらしのなく頃に

ハルヒ」の次くらいに話題を集めたのが「ひぐらし」でしょう。思えば随分同人系作品も身近になったものです。同じく有名な同人作品である「月姫」のアニメ化が不評だっただけに、「ひぐらし」の成功によって新しい一歩が踏み出された……気がします。
関係ないですけど、ここまで作品とマッチしたOPというのも珍しいですね。かつての特撮作品のように主人公の名前を連呼するわけでもなく、ありふれた萌えアニメのようにヒロインに曲を歌わせるわけでもないのに、見事に作品内容を表現しています。こんなOPが増えてほしいですね。


3番目は『Fate/stay night』より、タイナカサチdisillusion
http://www.youtube.com/watch?v=Z9OhDZrAMEc

disillusion

disillusion

今年はエロゲ原作のアニメが多かったですね。はてなの「リスト::アニメ作品//2006年」を元に調べてみると、「Fate/stay night」「Soul Link」「つよきす Cool×Sweet」「乙女はお姉さまに恋してる」「はぴねす!」「Gift 〜eternal rainbow〜」「Kanon」「夜明け前より瑠璃色な」の8作品。
……あれ、たいしたことないですね。少なくとも、ライトノベル原作作品に比べれば普通です。何かと話題になることが多かっただけに(「夜明けな」のキャベツとか)、実数以上に多く感じたのかもしれません。あと、現在の4クール目にその半分以上が集中しているのも原因かな。


4番目は『BLACK LAGOON』より、MELLRed fraction
http://www.youtube.com/watch?v=Kom_HXWkRlw&mode=related&search=

Red fraction

Red fraction

例年に比べて続編・リメイク作品が多かったように思います。ブラックラグーンは1年間で2期分製作されましたが、「プリキュア」は第3シリーズ「円盤皇女ワるきゅーレ」は第4シリーズ、「ギャラクシーエンジェる〜ん」に至っては第5シリーズですぜ旦那……。ただ、それらの作品がどれも高いクオリティを保っていたのはさすが。
高いお金をかけてアニメを作ろうとすると、やっぱりある程度の成功が見込める続編に手を出したくなるのでしょうか。また、アニメオリジナル作品だと確実に売れる内容・製作陣をそろえた結果、同じような作品ばかりになることも……。
この「ブラックラグーン」のOPもアニメらしくないといえばアニメらしくありません。作品内容が見る人を選ぶだけに、門戸だけは広くしておこうという意図が見られます。


折り返しは『かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜』より、eufonius恋するココロ
http://www.youtube.com/watch?v=y7zKT4BBGZI

TVアニメ「かしまし?ガール・ミーツ・ガール?」OP主題歌 恋するココロ

TVアニメ「かしまし?ガール・ミーツ・ガール?」OP主題歌 恋するココロ

上に書いたように「最大公約数狙いの作品」が増える一方で、作品およびアニメ視聴者層の多様化というのも今年は強く感じました。ロングテールの考え方で言えば、しっぽの部分が細く長くなっているようです。特に、ガールズラブ的要素を持った作品が増えていませんか?主なところでは「かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜」「シムーン」「ストロベリー・パニック!」「乙女はお姉さまに恋してる」……最後のは違うか。ボーズラブでも「学園ヘヴン」などがあり、恋愛モノの裾野が広がった感が。


どんどん行きましょう。『おとぎ銃士赤ずきん』より、田村ゆかり童話迷宮
http://www.youtube.com/watch?v=gHnZaNuWt2U

童話迷宮

童話迷宮

別に今年に限った話ではないのですが、メディアミックスが多く行われました。上述のライトノベル・エロゲ作品をはじめとして、この「おとぎ銃士赤ずきん」なんて小説・漫画・フィギュア・ゲーム、さらにはロッテリアの景品にまでなってしまう始末。今年は、メディアミックスの元祖とも言うべき「時をかける少女」が映画化されたという意味でも印象深い年ですね。
ただ、それぞれのメディアにはそのメディアにしかない特色があるわけで、必要以上にメディアミックスを有難がるのもどうかな、と思います。
あと、田村ゆかりなど人気声優の出演作品数には余り変化がなかったのですが、作品数自体が増えているとしたら、相対的に人気が分散しているのかもしれません。


今度は『ギャラクシーエンジェる〜ん』より、ルーンエンジェル隊『宇宙で恋は☆るるんルーン』
http://www.youtube.com/watch?v=EATYWHnccE0

これは僕の主観ですが、今年はちいさくまとまった「上手いけれど後を引かない作品」が多かったと思います。上の「ギャラクシーエンジェる〜ん」も、演出は非常に上手いのですが、ストーリーにいまひとつインパクトがない。
ただ、ストーリーを忘れて演出だけを見る楽しみ方があっても良いはず。そう思わなければ「びんちょうタン」なんて見れたものでは(ry)
続けて『うたわれるもの』より、suara夢想歌
http://www.youtube.com/watch?v=Gq8uWLMaLg8
TVアニメ「うたわれるもの」OP主題歌 夢想歌

TVアニメ「うたわれるもの」OP主題歌 夢想歌

前述の「ひぐらし」とは異なり、作品の内容を表しているとは言いがたいけれど文句なしに名曲です。まあ、いろんな主題歌があって良いのではないでしょうか。
これは特に言うことがないですね。


あと少し。『kanon』より、彩菜『Last regrets
http://www.youtube.com/watch?v=Dda7pUdFzj8&mode=related&search=

Kanon オリジナルサウンドトラック

Kanon オリジナルサウンドトラック

CLANNADをアニメ化する前哨戦かと思いましたが、全然話を聞かないですね。
さて、圧倒的な技術力を見せ付ける京都アニメーション。で、僕なんて単純だから「京アニすげー」でおしまいなのですが、人によっては、技術を見せつけているだけでストーリーがおざなりだとも感じているみたい。
ただ、僕の考える最高に高度な作品とは、山場もオチもなくても面白いと感じられる作品のことなのです。そういう意味でKanonは非常に高度だと思います。理解されないかもしれませんが。
うーん。よく考えてみると、今年話題の中心にいたのは「ハルヒ」でも「Kanon」でも「ひぐらし」でもなく、京都アニメーション自体だった気が。作品より目立つとはけしからん会社だ。


最後は『ノエイン もうひとりの君へ』より、eufonius『idea』
http://www.youtube.com/watch?v=4efxEQqMBLY&mode=related&search=

Idea

Idea

もう何もいうことはありません。本編はともかく、OPとしては今年最高の作品だと自信を持って言えます。本編にも難解な部分がありますが、それでもノエインが多くの人に評価されたこと、そのこと自体を僕は評価するべきだと思います。


総論:今年は「ハルヒ」に話題が集中した感がありますが、年間を通して良作が見られる年でした。先述したとおり、作品のスケールが小さくなった気もしますが……。
上に挙げた作品は殆どが原作付き。ただ、「ノエイン」のようなアニメオリジナルの良作も出ているわけで、決してアニメ業界の未来に悲観する必要はないと思います(視聴者としては。業界人は悲観した方が良いかも)。