素晴らしきアメリカン・アニメーションの世界〜『ベティ・ブープ』を見よう!〜

頭が大きくていかにもアニメ的な造形。だけど歌が上手くて、日本の映画評論家からも絶賛された大ヒロイン。トムとジェリーミッキーマウス、ドナルドダックにポパイなどと共にアメリカン・アニメーションの黄金時代を支えながらも、現在では一部の熱狂的ファン以外には忘れ去れた名キャラクタ。それがベティ・ブープです。
とはいえ、アニメーションの世界に始めて「お色気」を持ち込んだという意味では非常に重要な位置を占めるキャラクタであることは間違いなく、犬のビンボーや道化師のココと共に画面狭しと大活躍の姿は、今見ても実に面白い。今日はそんな『ベティ・ブープ』作品を紹介したいと思います。
能書きを並び立てても仕方がないので、とりあえず一本見てもらうことにしましょう。

1933年の『Betty Boop's Penthouse』。ビンボーとココをうっとりさせ、襲ってきた怪物を花に変えてしまうベティさん。アイドルとしての魅力も十分に発揮され、ギャグも面白いというオススメの作品です。
この他にも、時にはカーレーサ(Betty Boop's Ker-Choo)、時にはベビーシッタ(Baby Be Good)など、様々な姿を見せてくれるのもベティさんの魅力です。以下、ベティさん八面六臂の大活躍を紹介します。


まずは1931年の『Binbo’s Initiation』。道を歩いていたビンボーはマンホールの穴に落っこちて、地下の秘密結社に迷い込みます。「メンバーになるか?」と訊かれたビンボーは地下を逃げ回るのですが、最後に『Initiation』とはビンボーの成人式であったことが判明してめでたしめでたし。ベティさんとダンスを踊って終わり、という話。
ギャグのテンポが良いので個人的には好きな作品。ただ、ベティさんの造形やダンスは実に酷いですね。筒井康隆が「田舎娘の時代」と呼んだ、洗練されていない時期のベティさんの姿が見て取れます。

1932年はベティさんの当たり年で、数多くの傑作が生まれました。その中から今回取り上げるのは『Betty Boop, M.D.』。ここでは何故か薬売りのベティさん、「JIPPO」という謎の薬を周囲の人たちに飲ませます。そこから先が凄い。薬を飲んだ赤ん坊はあっという間に老人となり、足を怪我しているはずの老人は包帯を巻いたまま飛び跳ね、人々は体を伸び縮みさせながら行進する。ちょっと夢に出てきそうな光景で、実にシュール。ラストシーンなんて、赤ん坊が牙をむいた怪物になって吼えるという、病気みたいな終わり方になっています。今回取り上げる作品の中では文句なしの最高傑作。

同じく1932年の『I'll Be Glad when you're dead you rascal you』。ベティ作品の中でも変り種で、何とルイ・アームストロングとベティさんの競演が見られます。
ジャングルにやって来たベティさんたちは土人に襲われて逃げ回ることに。その時、ビンボーやココを追いかけてくるのが実写のアームストロングなんですね。よくもまあサッチモはこんな酷い役を引き受けたものだ、という感じ。

1935年の『Little Nobody』ではベティさんの露出度も低く、すっかり家庭的になってしまったように見えます。ああ、全ては時代が悪いんだ。話の主役もベティさんの愛犬パジィであんまり面白くないですね。ただ、他所のレディにちょっかいをかけて振られたパジィを慰めるためにベティさんが歌う「Little Nobody」が上手いことと、川に流されたパジィたちが滝つぼに落ちそうになるお決まりの展開は割と良いかもしれません。
このころから徐々にベティさんの造形は人間に近づいていくことに。最後期の作品に当たる『Rhythm on the Reservation』ではもう、完全に普通の女の子になっています(公式設定では16歳らしい)。

はっきりいってつまらないですね、この頃になると。現実にいたら怖くて仕方のないような造形だった頃のほうが色気もあったし面白かったという不思議。アニメって本当に難しい、という結論が出たところでこの紹介記事は終わりとします。
なお、オススメの『ベティ・ブープ』があるという方は是非コメント欄に書き込んで下さい。ご意見ご感想お待ちしております。

参考

wikipedia-ベティ・ブープ
ベティ・ブープ伝説