「大正博の美人国」(『東京日日新聞』1914年3月13日)
安田雅彦によると、大正の15年間で合計116回の博覧会が開かれている。1914年の3月20日から7月31日まで開かれた東京大正博覧会はその中でも特に有名なものであるが、「自由・平和が協調〔ママ〕され産業博色が薄れ、文化性や娯楽性が盛り込まれるようになり、746万人を集めた」という。
参考:絵葉書に見る大正時代の博覧会
パビリオンの中では「美人島旅行館」が著名。選りすぐりの美女を様々な趣向を凝らして披露する、要はコスプレ美女の展示館である。今日取り上げる記事も(大正博覧会の準備段階で書かれたものだが)客寄せに美女を使っていたという話。
東京半襟組合(半襟は和服の襟につける飾りみたいなもの)は大正博覧会に、お座敷・茶室を備えた数寄屋造りの小展示場を設けた。「組合でも始めから女に縁の深い商売であるから此の座敷に座らせて看板にする美人の選択には随分苦心を重ね」、○○、○○、○○の三名(記事では実名・年齢・生家が書かれている)が選ばれた。この三人は「始めから賑やかな中に出て精々良縁を求めたいと希願して居つたのである」。「陳列上では一切他と口をきく事を厳禁されて居るが其代り努めて態度をしとやかに触れば散らん風情を見せると言ふ事である」。
なお、この記事では「美女による客寄せ」がこのパビリオンに限ったことではなく、いくつかの「余興飲食店」(おそらく性風俗店ではないだろうが、実態不明)でも用いられていることを伝えている。