ぱじゃまソフト『プリズム・アーク』

PRISM ARK リマスター版

PRISM ARK リマスター版

冒険活劇かつ貴種流離譚。冒険活劇である以上「敵」が出てくるわけですが、巨大ロボットのような体躯に大きな翼、頭上には光の輪をもった「天使」として敵が描かれているという点には新鮮さを感じました。むろん「堕天使」として敵を描くこと自体はありふれた発想ですが、記号的な天使には収まらないインパクト、背景にある物語を想像させる存在感をもったデザインだと思います。
実際、世界設定もよくできています。おそらくはキリスト教イスラム教をモチーフにしたであろう宗教戦争を背景に、突如敵国の兵器として現れた「天使」の謎を中心に物語を展開していくわけですが、(だいたい予想はつくのですが)真相への興味でぐいぐい読ませていく。……ただし、1周目までは。
これ、全7周も必要な話ですかね?共通ルートは長いし、個別ルートに入っても半分くらいは共通テキストだし、どのルートも判を押したように同じ結末へと向かっていくので、2、3週もしたあたりで飽きてしまいます。ウリの戦闘パートも作業感が強いですし。「天使」の扱いもそこらの量産型兵器という感じで、設定の重さに見合った待遇を得られなかったという印象が。
一言でいうと、名作になり損ねた凡作。
唯一よかったのはフェル編(このルートだけやって終わりにするのも可)。天使の登場で始まった物語が、天使の謎を中心に展開され、そして天使の活躍によって閉じられるという首尾一貫性が気持ち良いです。一方主人公はと言えば、最後まで読んでもどういう人間なのかよくわからなかった、というのが率直な感想。いや、むしろ読み進めるほどにわからなくなると言うべきか……。ヒロインに対してとる態度によってシナリオを分岐させていく以上、多少の性格のブレはやむを得ないのですが、それならばなおのこと「この主人公にとって譲れないことは何か」を明確にしてほしかった、と。