『Rewrite』論のためのノート(3)

Rewrite 初回限定版

Rewrite 初回限定版

今回はMoon編。前半部分はロミオ節炸裂、という感じで、読んでいて心地良い。ただ、『最果てのイマ』の延長線上にある話ですね。認識の階梯をどんどん上がっていって神の孤独に触れるあたりとか。

瑚太郎「あらゆる“今”でない場所。/あらゆる“此処”でない場所。/それが“今夜”なのだろう」
(Moon編)

『C†C』の祠、『イマ』の脳内対話。さまざまな時間と場所の狭間にある場所。むろん『リトルバスターズ!』でもそういう場所が重要な役割を果たすわけですが。ところで篝というキャラクタは『イマ』のイマと似ているような(どちらも掲示板的なところで素がでる)。
・神話から歴史へ

もしこの宇宙に神というものがいるなら、そいつはとてつもない苦痛の中に生きているはずだ。/知性は自らの孤独を浮き彫りにする。/絶望と、物理の無常から目をそらせなくなる。
(Moon編)

対話。/俺は、彼女をわからないといけない。/同時に、向こうにも俺をわかってもらいたい。/ふたりの間に引く線について探りたい。/線が引かれることで、やっと人は安心できる。次にやるべきことも見えてくるはずだ。
(Moon編)

・孤独に耐えること、旅
しかし、その一方で人類は「愛さえ届かない領域で」「寂しさに耐えなければならない」「記憶があれば、それができる」。

篝「……良い旅を、人類」
(Moon編)

…愛がない知性だけの命では、広がれない?/…ああ、自己犠牲の精神か…/…だが…/…そもそも、なぜ広がらねばならない?……/…そんな理由で?/…え、これって正しいのか?嘘みたいだぞ?/…そんな優しいものなのか?/…神なんてどこにもいないのに?/…その優しさの主体はどこから来る?/……構造…が…?/…結果論じゃないか…/…でもそれが…真実?」
(Moon編)

「なぜ人類は広がらなければならないのか」。この重要な問いに対する回答は、以上のようなものだ。全然わからない。ただ、そこに「優しさ」があるという。

一つだけわかったこと。それは、人類は孤独じゃないということだ。
(『星空☆ぷらねっと』藤原佳多奈編)

知性が作り上げたこの合理的な社会を抜け出し、いまだ出会わない他者と出会うために旅に出ること。篝から受け継いだものを、また別の誰かに贈るために続けられる旅。
リトバスとの関連
Moon編の中盤、篝の作成する命の地図に瑚太郎が「いつかまた君と会いたい」というメッセージを書き込み、それをきっかけとして物語が転換していくわけですが、このメッセージの意味について、s_mirai氏のRewrite論「すべてを救う、たった一度のやり直し」(双葉文学カフェ『FLOWORDS』vol.3)を読んで初めて気づいたことがいくつか。これ、リトバスの主人公が病気を克服する際のセリフ「ぼくは、きみとであいたい」をもじってるんですね(たぶん)。ということは、その程度の意味ということなのかもしれない。
・ところで
いま思いついたのでいま書くけれど、「大災害後」をモチーフにしたこの作品、現実の大災害の直後だったら少し白けたかもしれない(だから発売延期したのだ……というのは邪推に過ぎるか)。『Rewrite』のなかで災害を起こすのは、
1.危機が近づいていることを知りながら「自らの利益を最大化させる」ことで結果として手遅れになった人々
2.彼らの合理的な振る舞いの陰画としてある、終末を夢想する人々
の協力プレイであり、それ自体、現実をなぞっているようなところがある。で、それを防ごうとする瑚太郎は、危機を直視し、「自らの利益を最大化しない」別の価値を提示しようとする。