『Rewrite』論のためのノート(3)
- 出版社/メーカー: KEY
- 発売日: 2011/06/24
- メディア: DVD-ROM
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瑚太郎「あらゆる“今”でない場所。/あらゆる“此処”でない場所。/それが“今夜”なのだろう」
(Moon編)
『C†C』の祠、『イマ』の脳内対話。さまざまな時間と場所の狭間にある場所。むろん『リトルバスターズ!』でもそういう場所が重要な役割を果たすわけですが。ところで篝というキャラクタは『イマ』のイマと似ているような(どちらも掲示板的なところで素がでる)。
・神話から歴史へ
もしこの宇宙に神というものがいるなら、そいつはとてつもない苦痛の中に生きているはずだ。/知性は自らの孤独を浮き彫りにする。/絶望と、物理の無常から目をそらせなくなる。
(Moon編)
対話。/俺は、彼女をわからないといけない。/同時に、向こうにも俺をわかってもらいたい。/ふたりの間に引く線について探りたい。/線が引かれることで、やっと人は安心できる。次にやるべきことも見えてくるはずだ。
(Moon編)
・孤独に耐えること、旅
しかし、その一方で人類は「愛さえ届かない領域で」「寂しさに耐えなければならない」「記憶があれば、それができる」。
篝「……良い旅を、人類」
(Moon編)
…愛がない知性だけの命では、広がれない?/…ああ、自己犠牲の精神か…/…だが…/…そもそも、なぜ広がらねばならない?……/…そんな理由で?/…え、これって正しいのか?嘘みたいだぞ?/…そんな優しいものなのか?/…神なんてどこにもいないのに?/…その優しさの主体はどこから来る?/……構造…が…?/…結果論じゃないか…/…でもそれが…真実?」
(Moon編)
「なぜ人類は広がらなければならないのか」。この重要な問いに対する回答は、以上のようなものだ。全然わからない。ただ、そこに「優しさ」があるという。
一つだけわかったこと。それは、人類は孤独じゃないということだ。
(『星空☆ぷらねっと』藤原佳多奈編)
知性が作り上げたこの合理的な社会を抜け出し、いまだ出会わない他者と出会うために旅に出ること。篝から受け継いだものを、また別の誰かに贈るために続けられる旅。
・リトバスとの関連
Moon編の中盤、篝の作成する命の地図に瑚太郎が「いつかまた君と会いたい」というメッセージを書き込み、それをきっかけとして物語が転換していくわけですが、このメッセージの意味について、s_mirai氏のRewrite論「すべてを救う、たった一度のやり直し」(双葉文学カフェ『FLOWORDS』vol.3)を読んで初めて気づいたことがいくつか。これ、リトバスの主人公が病気を克服する際のセリフ「ぼくは、きみとであいたい」をもじってるんですね(たぶん)。ということは、その程度の意味ということなのかもしれない。
・ところで
いま思いついたのでいま書くけれど、「大災害後」をモチーフにしたこの作品、現実の大災害の直後だったら少し白けたかもしれない(だから発売延期したのだ……というのは邪推に過ぎるか)。『Rewrite』のなかで災害を起こすのは、
1.危機が近づいていることを知りながら「自らの利益を最大化させる」ことで結果として手遅れになった人々
2.彼らの合理的な振る舞いの陰画としてある、終末を夢想する人々
の協力プレイであり、それ自体、現実をなぞっているようなところがある。で、それを防ごうとする瑚太郎は、危機を直視し、「自らの利益を最大化しない」別の価値を提示しようとする。