『Rewrite』論のためのノート(4)

Rewrite 初回限定版

Rewrite 初回限定版

今回はTerra編。この作品のクライマックスであり、白眉。文明史であり、割と素直な恋愛物語でもある、という二面性が素敵ですね。文明と恋愛がどこでどう繋がっているのか、少し考えてみる必要があるでしょう。ちなみに私の好きな台詞は、篝「考えるべきはヒトの役目。/知性の責務を、いつになったら果たしてくれるのですか?」
・世界の狭さ

瑚太郎「人は必ず敵対する。必ずだ。どんな状況からでも相手のすることにケチをつける。/なぜだか、それはどんなに文明が発展しても、起こる。受け入れがたい相手が必ず出てきてしまうんだ」
篝「不合理すぎます」
瑚太郎「そういう反発する力が、進化には必要だったんじゃないかな…よくわからんけど。/けどもう、地球には広がれる土地なんて残ってないからな。/なんとか、受けれてやっていくしかないんだ」
(Terra編)

開拓精神は、篝にとって良い記憶のようだ。/しかし今の地球に、開拓できる場所はほとんどない。
(Terra編)

頻繁に語られる、この世界の狭さ。地理的な意味だけで語られているわけでは、おそらくない。インターネット、経済、その他社会システムが世界中を覆い尽くすことの、心理的な閉塞感が背景にあるように思われます。「小さく、経済的に生きていくしかない」。むろん、この物語の最後で重要な役割を果たすのはインターネットに他ならないわけで、あくまでも両義的。『イマ』がそうだったように。
ただ、世界が狭いから宇宙に出ていこう、という単純な結論をそのまま受け取ると、『Rewrite』はつまらない。ポイントはふたつ。1.宇宙に出ていくことは、いわゆる「植民」と異なり、人間の変容を伴う。というか、もはや人間ではないかもしれない。

忍「上を見れば、外を見れば、その外縁に応じた絆があって良いと思うんだよ」
(『最果てのイマ』プチとマルの墓参り)

2.地球に代わる新しい星は見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない。そこまでは描かれない。月の篝から送られたものを、地球の瑚太郎が受け取り、月の篝へ送り返されるところで物語は閉じられる。
・よい「記憶」
なぜ「よいことをしろ」ではなく「よい記憶を見せろ」なのだろうか。それはたぶん、記憶は人に伝えることができるから、受け継いでいくことができるから、なのだろう。

井上「自慢したかったのかも。それが誰かひとりでもいい」「……君ひとりでもいい」
(小鳥編)

よい記憶を、正しく受け止めること。

ふと思う。/佳多奈は、星の世界を理解しているのかもしれない。
(『星空☆ぷらねっと』藤原佳多奈編)

僕らは皆、佳多奈に出会って鍵を渡すため、混沌の世界をあてもなく彷徨っていた。
(『星空☆ぷらねっと』藤原佳多奈編)

・代替可能な愛

だけどマーテルの愛は、誰だろうが受け入れる愛だ。/……誰でもよいのだ。/天王寺瑚太郎だから、ということがない。/代替可能な友愛。/それが俺には、少しきつい。
(Terra編)