宮崎駿オススメのアニメ映画『雪の女王』について。

映画『雪の女王』新訳版公式サイト

雪の女王

雪の女王

2月9日から大阪でも上映が始まるそうです。僕みたいに8時間かけて東京に行かなくても良いのだから(めそめそ)、関西圏の方も是非この機会に見ておくことをオススメします。
最初にストーリィをごく簡単に説明すると、ゲルダという少女が、雪の女王に連れ去られた幼馴染のカイを探すために、魔法使いや山賊に捕まったりしながらも諦めずに旅をする話です。
僕なんて宮崎駿が絶賛しているから見に行ったようなものですが、確かに宮崎駿が好きそうな話だと思いました。『千と千尋』が一番近い。恋愛を家族愛に置き換えれば、ほぼ同じテーマを扱っていると言えます。
僕は渋谷の「シネマ・アンジェリカ」で見てきましたが、入り口近くの階段に宮崎駿のインタビュー記事が貼ってありました。映画を見た帰りに読んでみたところ、僕とは見ていてるところが全然違って面白かったですね。『雪の女王』の公式サイトにも一部掲載されているのでリンクを貼っておきましょう。
http://www.ghibli-museum.jp/snowqueen/interview/miyazakihayao/
あと、カイをさらう「悪役」である雪の女王ですが、このキャラクタの持つ「気品」に僕は心惹かれました。物語の最後、ゲルダにカイを奪い返されたあと、女王は2人を見つめながら何も言わずにすーっと消えていきます。女王は主人公たちにとって途方もなく大きな存在ですが、その内側に哀しみを湛えている。ジブリだと『もののけ姫』のシシ神様が近いかな……。
一番の見所はやはり映像の美しさでしょう。作画が優れている、といった技術的な美しさではなく、美しいものを美しく見せることに優れている。
例えば雪の女王が住む城を最初に描いたシーン。ここではまず荒れ狂う海を映します。波が高く舞い上がり頂点に達した時、波しぶきはきらきら輝く雪に変わる。そして、その奥からゆっくりと氷で作られた女王の城が現われる……という風に。
花火を描いたシーンでは、まず主人公を囲む空間がさっとピンク色に染まります。花火の本体を映すのはその後。物体の持つ最も印象的な部分を抜き出して僕たちの感性を揺さぶり、それからゆっくりと全体像に迫っていく。
場面転換ではアイリス・アウト、フェード、ディゾルブなどの「やわらかい」技法が多く使われていました。この辺、同じ日に見た『空の境界』と比較するとさすがに古さを感じますが、ただ、非常に「やさしい」という印象を受けました。
「デザインは削ること」と言われるように、ある事物を提示する際に何が本質なのかを考え、それを的確に抽出する。最近のアニメでは背景や人物を含めたトータルでのバランスの良さが好まれているようですが、取捨選択という基本的な作業の重要性を改めて認識した次第です。
それと、同時上映の『鉛の兵隊』がまた素晴らしかった。何を話してもネタバレになるので書きませんけど、『雪の女王』の後にこれを持ってくるか、という絶妙な組み合わせであることは間違いありません。
空の境界』を見るために東京に行った、と見せかけて実は本命はこの映画でしたが、その読みは正しかったと思います。作品は古くなっても、その設計思想は古くならない。現代のアニメに慣れた僕たちにとっても吸収するべきエッセンスを無数に見つけられる、そんな作品でした。