筒井康隆がファウストで執筆

虚人たち」「朝のガスパール」などの著作で知られる日本を代表するSF作家、筒井康隆さん(73)が若者に人気の「ライトノベル」を執筆することが、9日までに発表された。筒井さんの公式ホームページによると、「ビアンカ・オーバースタディ」というライトノベル作品を2008年1月発売予定の雑誌「ファウスト」(講談社)に掲載する。詳細は未定という。

http://sankei.jp.msn.com/culture/books/071109/bks0711090807000-n1.htm

筒井先生の凄さのひとつとして、守備範囲の広さが挙げられると思います。短編の多くを占めるドタバタから『家族八景』のようなドラマ、『虚人たち』『残像に口紅を』などの実験小説、小説の極北へと行き着いた『エロチック街道』『遠い座敷』、『富豪刑事』などのミステリィ、そして『時をかける少女』に代表されるジュヴナイル。
それらに共通する、いわゆる「筒井康隆らしさ」とは「物事を裏返して見せること」である、と僕は考えます。『家族八景』では表面的な「家族の団欒」の裏側にある負の情念を見せ、『残像に口紅を』では言葉と物語の間にある主従関係を逆転させ、『富豪刑事』では主人公の「浮世離れした大金持ち」というマイナスイメージをひっくり返し、主役として活躍させました。
その意味では、ジュヴナイルは筒井先生にとって未開拓の地でもあります。映画化で『時をかける少女』が筒井先生の代表作と見なされる向きもありますが、あれは全く「らしくない」作品で、今から書くとすれば、ジュヴナイルという枠組みの中でジュヴナイルの壁を突き破る、そんな作品になるんじゃないかな、と思います。