『ゼロの使い魔〜双月の騎士〜』に対して感じた違和感

昨日まとめて9話まで見たのですが、ラブコメと並行して「戦争の悲惨さ」を訴えるという、わけわかめな展開。しかも内容が安っぽい……。慣れないことをするから、すごい極端な説明口調になってるし……。
そもそも『ゼロの使い魔』という話自体、見終えた後に「何でこんなの見てたんだろ、僕」と落ち込んでしまうような内容ではあるのですが、視聴者の固定観念をひっくり返そうとか、考えさせられるような話にしようとかせず、エロと笑いというエンタテイメントだけに徹しようとする姿勢は決して嫌いではありませんでした。
ただ、1期から数えて24話という構成がそもそも長すぎるし、それだけ長ければ余計な要素が入るのも仕方ないのかもしれません。最近のアニメでは、短すぎてダメになる作品よりも、長すぎてダメになる話の方が多いような気がしますね……

今回の他の候補作はいずれも描かれている世界があまりにも狭く、書くことが他にないのかと思えるほど男女の愛やデートやセックスの話ばかりであり(何度も言うようだがセックスとは書くものではなくするものだ)、短くすればよくなる筈の話を一冊の長篇にするためにだらだらと引き伸ばしていて退屈だったり、書いていてさすがに世界が狭いと感じたのか陳腐な政治論や戦争論が出てくるもののそこが一番つまらなかったりする。

第16回三島由紀夫賞選評−筒井康隆

エンタテイメントの中に高度な社会批評を織り込むような作品もごく稀に存在しますが、そういうのって、「エンタテイメントしている自分」を俯瞰的に眺める視点があってこそなんですよね。『ゼロの使い魔』が7・8・9話でやったように、現実世界の規範をただ作品の中に持ち込んだだけでは面白くなるわけがありません。
エンタテイメントという枠の中に留まろうとする限りにおいては、世界の狭さは必ずしもマイナスにはならないのだから、既にある世界を活かすような方向に進んでいくべきではないかと。ラスト3話での盛り返しに期待します。