アルフレッド・ヒッチコック『鳥』
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 発売日: 2007/06/14
- メディア: DVD
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見所は何といってもラストシーン。無数の鳥に囲まれながらゆっくりと車に乗り込む主人公たち。鳥がわずかに羽を動かしただけでもドキリとしてしまう、静かな迫力がありました。
街を脱出するため車が動き出したところで、物語は唐突に終わりを迎えます。鳥の翼に包み込まれた世界。鳥との戦いはこれから始まるのか?主人公たちはこの後どうなったのか?いかようにでも解釈できる、実に不気味なクライマックスでしたね。
ちなみに「なぜ鳥が人を襲ったのか?」その理由について作中では全くと言ってよいほど語られていません。意味ありげで何か関係あるのかな、というような描写はちょこちょこと出てくるのですが、やっぱりよくわからない。ヒッチコック作品には「マクガフィン」が頻出しますが、論理的首尾一貫性よりも映像のインパクトを重視するヒッチコックらしい構成だと言えるのでしょう。
人によっては「ストーリィがないようなものだ」とか「人間の心理が描けていない」という点を不満に感じるのでしょうが、僕はヒッチコックのことを「どう撮るか」が全ての人で、ストーリィや人間心理は極端な話カメラを向けるまで存在しない、と思っています。
ヌーヴェルヴァーグの面々がヒッチコックを褒め称えたのも、世界を映すのではなく映すことで世界を作っていく「作家性」に共感したためである、と言えるでしょう。