『新世紀エヴァンゲリオン(11)』

新世紀エヴァンゲリオン (11) (角川コミックス・エース (KCA12-11))

新世紀エヴァンゲリオン (11) (角川コミックス・エース (KCA12-11))

貞本は忘れた頃にやって来る(天災か)、というわけで10巻から相当間をおいての11巻です。
よく考えてみると1巻が出たのは1995年。1年に1冊以下の刊行ペースなのか……。物語が佳境に突入した最近では掲載頻度も上がっているようなので、12巻は早めに出してくれることを祈りましょう。
さて、基本的にはアニメ版に忠実な貞本エヴァですが、ところどころに見られるオリジナルの展開や表現に注目するべきところが多いと思います。その中でも渚カヲルの内面性に時間をかけて踏み込んでいる点が原作との最も大きな違いでしょう。
カヲルとシンジの対決にしても、アニメ版はあまりに唐突過ぎたと感じているので、個人的には漫画版の方が好きです。ただアニメ版の唐突な展開もある意味では「世界の不条理性」を描いたと言えるでしょうから、あれはあれで統一感が取れている。それに対して漫画版では、カヲルに握りつぶすシーンを「シンジがカヲルの首を絞める」イメージカットで表現したり、病室のアスカに拒絶されるシーンが「無言の拒絶」から「はっきりとした拒絶」に変更されていたりと、わかりやすい表現が多くなっています。
そのため、アニメ版から感じた「曖昧な不安感」というのは少し後退したのですが、「何故ここまで追い詰められたのか」という理由が具体的で凄くわかりやすいというのが漫画版の特徴だと言えるでしょう。この辺は好みの差ということで、どちらが上というわけではないです。
あと、テレビ版ラスト2話の話がごっそりなくなっていることに少し驚きました。あれはやっぱり無駄だったのか!?それとも新劇場版に合わせて、何かオリジナルの展開を入れるつもりなのでしょうか。