『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』の世界は広い

http://www.d-black.net/
http://d.hatena.ne.jp/tukinoha/20070415/p1

DARKER THAN BLACK-黒の契約者- 1 (通常版) [DVD]

DARKER THAN BLACK-黒の契約者- 1 (通常版) [DVD]

ヒロインが目立たないこと空気の如し、というサスペンスアニメ『DARKER THAN BLACK』を今回は取り上げてみます。
現在第8話が終わったところですが、良くも悪くも変な作品ですね。サスペンスサスペンスしていたかと思えばコメディになったり、必要なのか必要じゃないのかわからないキャラクタが大勢いたり。特にキャラクタたちは、それぞれに自分が物語の進行において「都合の良い」キャラクタではないと主張しているように感じられます。第7話、第8話で新しく登場したキャラクタなんてその典型ですね。彼らとは無関係に本筋は進み、その役割も明らかにされないまま舞台から降りていく。物語の一貫性を重んじる人にとって、この作品における雑多さというのは批判対象となるでしょう。
ただ、効率よく組み立てられた単一の物語とは異なり、複数の筋が並行し、時には衝突して流れていく『DARKER THAN BLACK』のあり方というのは、単一の物語には生み出せない意味的豊かさをもたらしていると考えられます。
地獄門(ヘルズ・ゲート)を巡って黒が戦い、契約者の悲劇が繰り返される物語――それが世界のほんの一部でしかないこと、物語の外側には幸せな日常が待っていること。世界の広さをそっと指し示すことで、黒たちの孤独・悲しみをより一層掻き立てていくのです。
各エピソードごとに登場人物が入れ替わり、その趣を変えていったとしても、僕たちはそれらを貫く創造の声を聞き取ることが出来るでしょう。
あと、これはリアルタイムで見ている人間だけかもしれませんが、突然作品の雰囲気が変わったことに対して「テコ入れだ!」なんて面白がるのも『DARKER THAN BLACK』に対するひとつの楽しみ方ではないかな、と思います。
この作品は「世界の謎」というミステリィ的な要素を持っているのですが、ミステリィの単行本を一冊渡されるのとは明らかに違う、現在進行形の作品であるという印象を強く受けます。それはつまり、上述した「世界の広さ」とも関係しますが(エピソード単体で簡潔しているという印象を与えない)、製作者の意図らしきものをあからさまに見せられたことによる、ある種の親近感。それによって一層意図を捉えようとする思いが促され、また「次回はこうなるんじゃないか」「今後の展開はああすれば良い」という「脚本執筆」も行われ、世界はさらに広がりを見せるのです。
ニコニコ動画あたりでワイワイ見るのがオススメです(なんて書いたらマズイのかな?)。