『黄金狂時代』の名シーン

ゴールドラッシュに沸くアメリカで、金鉱を求め、雪山を訪れるチャップリンの演じる「チャーリィ」。後ろから熊が近づいてくるのですが、チャーリィはそのことに気付きません。そのうち、熊の方で気が変わったのか、危険はいつの間にか過ぎ去ってしまいます。見知らぬ運命に翻弄される人間を象徴する印象的なシーン。それが『黄金狂時代』の始まりでした。
監督・脚本・主演全てチャップリン。元々はサイレント映画ですが、今回見たサウンド版で新しく組み込まれたナレーションもやっぱりチャップリンというわけで、彼の完璧主義者な側面がよく表れています。
まあ、チャップリンの魅力というのは淀川長治が散々語りつくしているわけで今更言うことはないのですが、やっぱり実際に見ないとわからないですよね。僕が一番感銘を受けたのはチャーリィがあこがれの女性を招いて食事を取るシーン。チャーリィはそこで「ダンスをお見せしましょう」と言いながら、2本のフォークをロールパンにつきさします。2組のフォークとパンで作った足で演じる、軽妙なタップダンス。これが実に上手い。他の人が言及しているところをあまり見ないのですが、これも映画史に残るべき名シーンだと思います。
ただ、あえて苦言を呈するならば、チャップリンによるナレーションは説明過剰であると感じました。憧れの人に髪を撫でられて見るからに幸せそうなチャーリィ、そこにわざわざ「チャーリィは幸せだった」なんてナレーションを入れる必要性があるのか、という問題です。体の動きだけで実に豊かな感情表現を見せてくれるだけに、そこは本当にもったいないですね。

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