『無限のリヴァイアス』−無力な少年達の現在

「どうして
どうしてそんなに憎むの?
悪いことなんてなにもしてないのに」

コードギアス』がお休みの間、同じ監督の『無限のリヴァイアス』を見ていました。

無限のリヴァイアス Vol.9 [DVD]

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舞台は2225年、人類が地球以外の星に住む時代。宇宙での訓練を受けていた少年少女たちは何者かの襲撃を受け、「リヴァイアス」という戦艦に乗り込んで逃げ出します。行く当てのない逃避行の中で極限状態に追い込まれた彼らの間では、やがて暴力の嵐が吹き荒れることに。
暴力を抑えるために振るわれる、より大きな暴力。誰かが悪い。誰もが悪い。そんな状況の中で、暴力も明晰な頭脳も持たない主人公にも否応なく突きつけられる選択。
無限のリヴァイアス』はそんな残酷さを描いた作品です。
コードギアス』とも共通することかもしれませんが、この作品の特色は徹底して「現在」を描いていることにあると思います。キャラクタ設定として過去のトラウマ(しかもインパクトのある)が存在しても、ほのめかす程度で過去それ自体を描くことはしない。過去へは戻れない。常に流れていく時間の中で、主人公たちはやがて過去になる「現在」を生きていくのです。
話が少し逸れますが、アニメにおいて(もちろん『リヴァイアス』においても)よく見られる「記号的」なキャラクタにとって最も危険なものは「時間の流れ」であると言えるでしょう。昔は目上の人に向けて使った「貴様」という言葉が現在では侮蔑的なニュアンスを帯びているように、記号がその内容と確実に一致していられるのは、そこに時間性の介入がない時だけです。
リヴァイアス』において、時間は流れ続ける。その中で記号の意味は次々とひっくり返っていきます。
ある少年の気高い姿は、高潔さから暴虐の象徴へと。
ある仕官の貴族意識は、高慢さから献身の源泉へと。
人は変わらないのかもしれない。けれど、人の与える印象は時間と共に変わっていく。それは、時間が流れる以上必然であったと言えるでしょう。その姿を描ききったという点に、僕はこの作品のリアリティを感じます。
僕がこれまで見てきた中ではトップ10には入る名作。オススメです。
最後にOP曲を紹介。有坂美香『dis-』