『クレイモア』−極限への挑戦

「妖魔の力を手に入れれば、強くなれると思っていた。だけど……。
妖魔の力を使う以上に、人間としての心が強くなくちゃいけなかったのに」
「だ、だめだ……」
「だから、お願い、早くして……。私が、人間の心を持っているうちに……」

妖魔を倒すため、あえて妖魔の血肉を取り込んで半妖となった女性たち。彼女たちはその強さと引き換えに、半妖であるがゆえに人間からも妖魔からも恐れられる孤独を引き受けなくてはなりません。しかも、時が経てば体内の妖魔に自らの体を乗っ取られ、自らが最も忌み嫌った妖魔に自分自身がなるという宿命もまた背負っているのでした。
戦うことそれ自体が豊かなドラマを生み出している、そのような観点に立てば『クレイモア』はバトル物として一級の完成度を誇っています。しかし、完成度が高いだけに、どうしようもないくらいに地味である、というのが僕の原作評。実はアニメもそれほど期待していませんでした。
ところが実際に見てビックリ。これは面白い。
原作の白さや寂寥感はそのままに、アクセントとしてかすかに差し込む光の表現。動きもシャープで、飛び散る血飛沫も非常にリアリティがあると言えるでしょう。背景もまた、この乾いた世界を表現するには漫画よりもむしろアニメの方が適しているのではないか、と思わせるほどにキャラクタと美しく融合しています。
この研ぎ澄まされた美しさは、あるいは原作を超えているのかもしれません。
こう言っては製作者に失礼でしょうが、今期のダークホースとして要注目の作品です。
最後にOP曲を紹介。ナイトメア『レゾンデートル』。

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