『天元突破グレンラガン』を楽しむために

「やれっ!お前なら出来る!」
「で、でもっ」
「いいかシモン、自分を信じるな。俺を信じろ。お前を信じる俺を信じろ!」
「何それ……」

地下の集落に生まれ、日の光を知らずに育ったシモンは、ある日腕にドリルのついたロボットを掘り出した。兄貴分のカミナは言う。このドリルで天井を突き破れば地上に出られると。果たして地上に出られたのだけれど、そこは巨大なロボットが歩き回る無法地帯で……
気弱な主人公、無鉄砲な兄貴にセクシィな美女、そして敵だらけの荒野というわけで、男の子の好きなものをぎゅっと凝縮した作品、それが『天元突破グレンラガン』です。
ベタもいいところなんですけど、真面目なシーンにもわざとベタな言動を折り込んで茶化すというのも、ガイナックスお家芸としてすっかり定着したという感がありますね。『トップをねらえ!』に代表される、ロボットアニメの最先端を走ってきたガイナックスならではの芸であると言えるでしょう。「クラークの3法則」にも「充分に発達したベタはネタと見分けがつかない」とありますしね。嘘ですけど。
しかし、ここで言う「ベタ」というのは、あくまでも登場人物の「機能」に注目した場合の話。主人公を追いたて、物語を動かしていく要因としては確かに「ベタ」なのですが、その人格、内面性には「ベタ」とは言い切れないオリジナリティを感じます。主人公の兄貴分であるカミナなんて結構複雑な人格ですよ。
古典的な作品をメタ視することによって生まれたこの作品は、見た目以上に「現代的」な構造を持っています。そういう作品を楽しむためには、表層をなぞるだけではなく、はし折らず、丹念にその内容を摘み取っていくことが必要となります。少なくとも「ベタ」という言葉だけでは片付けられないですね。
最後にOP曲を紹介。中川翔子(!)『空色デイズ