『ひとひら』−近年まれに見るほど「正しい」アニメ

「部の存続のためにも、あなた達にはなんとしても、それまでに役者として育ってもらいます」
「や、役者!?」
「ええ」
「む、無理です!私裏方を……」
「裏方?」「5人しかいないんだから、それはみんなの仕事よ」
「そんな……」

運命のいたずらで演劇研究会に入ってしまった主人公は内気であがり症な女の子。こんな調子で公演に間に合うのか!?しかも、その後にはもうひとつの演劇部との、存続をかけた対決も迫っていて……という、最近では珍しいくらい正統派な設定が心地よいアニメ、それが『ひとひら』。
ピンチに直面した主人公、変わりたいという願い、支えてくれる優しい仲間、先輩たち。それら王道的な要素をこれでもかというくらい詰め込まれているのがこの作品です。「こんな学園生活があったら良いな」という願望を形にしたようなストーリィ展開で、リアリティがあるというわけではありませんが、やっぱり魅力的ですね。
何だろうなぁこの心地よさは、と考えたとき、この作品世界が見える部分だけで完結していることに気付かされます。例えば演劇研究会の部長が演劇とは全然関係のないこと、言い換えるなら都合の悪いシーンを描かないことによって、僕たちは部長を「演劇が大好きな人」として素直に共感したりすることができるようになっているのです。この裏表のなさというのは、最近貴重ではないでしょうか。
あとはやっぱり川澄綾子の好演にも触れておくべきでしょう。『まほろまてぃっく』以来注目していますが、この方の深い知性と落ち着きを感じさせる声に代わりはいませんね。『ひとひら』でも演劇研究会の部長役で素晴らしい演技を聴かせてくれます。他にも氷上恭子雪野五月など何気に声優が豪華な点もこのアニメの良いところ。
最後にOP曲を紹介。浅見ユウコ『夢、ひとひら

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