グランド・ホテル−始祖という名の傑作

以前は映画をあまり見なかったのですが、常に何かの初心者でいたいので「映画マニア」を初めてみることにしました。どんなジャンルでも同じでしょうが、最初の頃は面白い作品を見つける嗅覚が冴えないので、ある程度評価が確定している古典を見ることにしています。

グランド・ホテル(トールケース) [DVD]

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1つの場所に集まった様々な人たちによる群像劇を描いたこの作品は、「グランド・ホテル形式」という、同じような形式の作品にとってのルーツとなっているそうです。当時としては画期的なアイディアだったのでしょうが、それを活かせる巧妙なストーリィ展開があるからこそ、恐れずにそのアイディアを使えたのではないでしょうか。同じ理由から、どのようなジャンルでも順を追って発展していったわけではなく、最初が突き抜けていることが多いですね。
それにしてもこの『グランド・ホテル』は上手い話です。単に別々の人たちを別々に描き、時に交わらせるだけではなく、「今そこにいない人」へと向けられる視線を感じさせてくれる点が素晴らしい。グレタ・ガルボがつぶやく「今日は何してたの?」という台詞はそんな視線を象徴していると言えるでしょう。あるいは、群像劇とは本来そういうものであるのかもしれません。並行する人生が時に交わる、その交差点が重要なのではなく、並行する人生が存在するという認識それ自体が群像劇の本質ではないか、と。
キャストにも触れておきますが、圧倒的に有名なのは主演のグレタ・ガルボジョーン・クロフォードでしょうね。ただ、僕としてはライオネル・バリモアとジョン・バリモアの兄弟による競演に見るべきところが多かったと思います。特にライオネル・バリモアによる田舎風の老人は、都会的な「グランド・ホテル」の中でひときわ異彩を放っていました。