南京事件否定論者への処方箋

今回は富山の薬売りの子孫(嘘。本当は農民)である僕が、「南京事件はなかったと頑なに主張する人々を説得する会(今考えた)」の皆様のお役に立てるよう、彼らを説得する祭に有用な処方箋をいくつかリストアップしてみました。用法・用量を守って正しくお使いください。
今回挙げる参考文献は、本だと読むのが面倒だし、大学紀要だと手に入らないところもあるので、有名どころの学会誌のみを挙げてみました。


1.「新しい歴史教科書を作る会」病

 症状:「正しい歴史なんて存在しないんだ」や「自虐史観だ」などと口走るようになる。「ガチガチのリベラル菌」が原因と見られる。半端なポスト構造主義者がかかりやすい。

処方箋:別名「上野千鶴子病」とも呼ばれ、彼らは酷くゆがんだ歴史家像を持っています。まずは、歴史家はそれほど馬鹿ではないということ、馬鹿な歴史家は冷や飯を食わされるので仕方なく「Voice」や「正論」、「諸君」などで連載して稼いでいるのだと教えてあげましょう。
また、彼らの中には「事実」と「意義」を取り違えているひとがいます。「歴史相対主義」と聞いて、「この世に正しいことは何もないんだ」とニヒリズムに陥りがちなので、「1600年に『関が原の合戦』があった。相対化してみろ」と優しく諭してあげましょう。

参考:上野輝将「「ポスト構造主義」と歴史学…「従軍慰安婦」問題をめぐる上野千鶴子・吉見義明の論争を素材に」『日本史研究』509号


2.「天才」病

 症状:彼らは1を聞いて10を知る天才です。そのため、1枚の捏造写真を見つけると「南京事件の写真は全て捏造だ」などと言い出します。また、万物の起源に精通しているため、彼らの批判している写真の出典がどこなのか、明記する必要を感じていません。

処方箋:よくあるパターンが「偽史料が別の史料から引用し、勝手な解説をつける」⇒「それを読んだ否定論者が喜んで非難する」⇒「否定論者はわずかに残る正しい部分を黙殺するので、間違った部分だけ伝わる」みたいな感じ。まずは元ネタを探すよう教えてあげましょう。
文章に対するリテラシーのある人も、写真では簡単にだまされがちです。下に挙げた論文では、「捏造写真」といわれている写真ですら捏造と言い切れない実態をわかりやすく解説してくれていますので、オススメです。

参考:井上久士「歴史学における写真資料・南京事件の場合」『歴史評論』606号


3.「時効・免責・過小評価」病

症状:「文化大革命の方が酷い」「南京事件で30万人も死んでいない。せいぜい数万人だ。だから大虐殺はなかった」などコペルニクス的転回を使いこなすようになります。実は非常に長い歴史をもつ病気で、70年代から同じ主張が繰り返されています。特徴として、「人間の数え方が大雑把になる」という点が挙げられます。

処方箋:歴史的には、南京事件否定派は「なかった説」「まぼろし説」を経て「あったけどたいしたことはない説」となり、現在ではこちらが主流です。実は80年代に一度論破されているのですが、みんな忘れたみたいなので再び出てきました。だから80年代の論文を読めば十分です。説明が長くなるので論文を読んでください。

参考笠原十九司南京事件研究をめぐる状況と問題」『歴史学研究』571号


この記事を書くために論文を検索してみたのですが、驚いたのは「南京事件」で引っかかる「諸君」「正論」「文芸春秋」「Voice」の多さ。あと「櫻井よしこ」もやたら多かったですね。何回同じ話をすれば気が(ry)。
誰が買ってるのでしょうか、あの手の雑誌。オピニオン誌っていうそうですけど。
(いくらなんでも単純化しすぎたな。批判されても言い返せないぞ。びくびく)