東洋大学のゴーストハント

ゴーストハントといい、京極夏彦といい、妖怪ものが全盛ですね。しかし、そのルーツを辿っていく際に、作品の多くが「妖怪そのまま」ではなく退治される対象であったり、神秘を暴かれる対象であることを考えると、鳥山石燕円山応挙ではなく、井上円了に求めるべきではないかという考えに至りました。
井上円了は明治期にオカルト研究をした人……というと少し語弊がありますが、「日本の夜明けは近いぜよ」な感じで民衆に科学啓蒙をした人ですね。妖怪なんて信じていたら文明が浸透しないぞ、というわけで次々とオカルトの種明かしをしました。そして付いたあだ名が「妖怪博士」。
こっくりさん」が潜在意識と不覚筋の働きによるものだと最初に言ったのもこの人です。だから筋力の小さい老人では「こっくりさん」はできないのだと。それにしても明治時代から「こっくりさん」があるというのも少し意外な感じですね。100年たっても同じ事をやっているのですから。
他にも、毎晩家にやってきてお告げをする「お狐さま」の正体が、腹話術で家の下女が話していただけだったとか、なかなか京極夏彦チックなエピソードも多く残っています。あまり有名ではありませんが、オカルト分野に与えた影響は絶大だと言えるでしょう。
大著『妖怪学講義』はオカルトマニア(もしくは怪奇大作戦が好きな人)必読です。

井上円了・妖怪学全集〈第1巻〉

井上円了・妖怪学全集〈第1巻〉

ちなみに、この人のお墓は本人のデザインで、でっかい「井」の上に円柱が乗っかっているというシンプル構造。井の上に円で了(おわ)っている、とか。駄洒落かよ……