エマ (1) (Beam comix)

エマ (1) (Beam comix)

自分にとって、読める漫画の幅は小説の幅よりもずっと狭くて、表紙だけを見て「あ、これは無理だ」と思うこともしばしばです。『エマ』もそんな漫画のひとつでしたが、ブックオフに全巻が揃っているのを見てついに手を出してみました。
読んでみて吃驚。これは面白い。
舞台は19世紀のロンドン。「世界の英国」の繁栄を謳歌する貴族たちがいる一方で、作中のセリフで「英国には2つの国がある。ジェントリとそうでないもの。言葉は通じるけど別の国」とあるように、貧富の差が激しい社会です。この作品で描かれているのは、上流階級の人々と暮らしながら、決して中に入ることは出来ないメイド、無産階級としてのメイドです。そして身分違いの恋に悩む主人公。
いやあ、本当に英国って難しい国だなぁ、という感じがびしびしと伝わってきます。全巻を通してその「難しさ」をひたすら丁寧に描いていて、それ以外の演出はやや控えめ。
脇を固めるキャラクタも、典型的ではありますが、みんなそれなりに意味を持っています。「必要のないことは描かない」ということは大切ですよ。当然のことですが、なかなか出来ることではありません。
この作品は、おそらく「メイドもの」というジャンルの中で新しい流れを生み出す源流ともなるでしょう。派手さはありませんが、非常に誠実な作品です。メイドさんが機関銃を乱射する作品が好きな人にも(僕も好きです)お勧め。