‎久住昌之・谷口ジロー『孤独のグルメ』

孤独のグルメ (扶桑社文庫)

孤独のグルメ (扶桑社文庫)

本棚に『孤独のグルメ』を置いているサブカル野郎は高確率で『ジョジョ』が好きで、うっかり話しかけると『ジョジョ』のどうでもいい薀蓄を聞かされるぞ逃げろー!というひどい偏見を持っていたので、読むのは今回が初めてです。
食堂、居酒屋、デパートの屋上と色々なところで主人公・井之頭五郎が食事をする。店内の風景や客層、食事の内容について五郎が(解剖学者のような口調で)感想を述べる。基本、これだけの漫画です。ときおり食事を終えた五郎が浮かべる「ヘヴン状態!」みたいな表情が最大の見どころでしょうか。あと、散々ネタにされていますが、詩的なようで詩的じゃない比喩のセンスが笑えます。
「ここでは青空がおかずだ」(デパートの屋上でフランクフルトを食べながら)
「うおぉン 俺はまるで人間科学発電所だ」(工業地帯の焼肉屋で)
あと、理路整然としていない素朴な心情であるだけに何言ってるのかよくわからない独白も。
「しかし…まあいいけどやはり焼きそばと餃子だけだと なんとなく堂々巡りしているようだ」(中華料理屋にライスが置いてなかったとき)
結構面白く読めたのですが、途中、五郎の過去の回想シーン(昔の恋人の話とか)が出てくるのは余計だと思いました。目の前の食事を丹念に描いていく本筋から浮いてしまっているという印象。