レッドクリフ』がテレビで放送しているので、ちらちら観ながら軽めの話をひとつ。
『HERO』を観たときも思ったことですが、中国の撮った映画で描かれる古代中国の姿は「何もそこまで……」と思うくらいの極端な専制支配の国だったりするんですよね。始皇帝とか、曹操がひとりで支配しているという感じの。時代性も希薄で、秦でも後漢でもほとんど違いがない。
ヘーゲルのような19世紀ヨーロッパ知識人は「中国には歴史がない」と、その停滞性を強調しましたが、現代中国はその差別的な見方を、むしろ内面化しているようなところがあります。清朝であったり、あるいは蒋介石の国民政府に至ってもなお残存する封建的政治体制を、人民による反封建運動によって打倒したというのが中華人民共和国の建国イデオロギィである以上、前近代社会を発展的に描くことは、中国共産党の正当性を疑うことにつながってしまう。
別の言い方をすれば、前近代社会の封建制をオーバーに描くことがナショナリズムに繋がっているわけです。この辺は、支配の正統性を古代から続く「万世一系」に求めた日本の天皇制と明確なコントラストを描いているのではないかな、と。