『喰霊』

喰霊 (1) (カドカワコミックスAエース)

喰霊 (1) (カドカワコミックスAエース)

アニメの方が面白いので、原作にも手を出してみました。既刊分に関しては読了したので、簡単に感想を。
1〜3巻、4〜7巻、8巻〜でまとまった話になっていますが、それぞれ最初は小さな事件から始まって、だんだん話が盛り上がっていき、最後には妖怪大決戦!という基本的な流れについては共通しています。妖怪大決戦のパターンなんて限られているので、オチはやや平凡。途中でぽんぽん追加される設定もご都合主義的なものが多く、どうもストーリィ構成の弱さを感じます。ひとつのまとまりが短いので、アニメ版のような畳み掛ける重さも感じませんでした。
見所としては「少女と凶暴な狗神」という取り合わせの妙、馬鹿な主人公、多彩なシチュエーションで行われるバトルアクション、この3つが挙げられるのではないかと思います。
特にアクションの見せ場となる大ゴマの密度、迫力は素晴らしい。ただ、全ての場合においてそうであるとは言えませんが、大コマの前後でアクションの流れが切れがちなのも確か。見せ場を大きく、印象的に描こうとするほど、前が圧迫されて上手く繋がらなくなってしまう。
カッティング・イン・アクションが出来てる場合は割と見やすいですね。例えばヒロインの神楽が喰霊・白叡を呼び出すシーン。小さなコマで「喰霊解放」と唱え、大きなコマで「白叡!」と言いながら敵をなぎ倒すわけですが、この間に1コマ入るか、あるいは小さいコマの方を躍動感たっぷりに描くかしている時は良い感じで、そうでない時は静から動への急激な変化でギクシャクしています。
ストーリィについては、「ヒーロー」としての主人公像がリアリティを失った現代の作品らしい内容だな、という印象を受けました。東京の命運を賭けて戦っている割にはそのことはあまり考えられない、東京よりも〜が大事だ!という近視眼的な話だったのですが、8巻から少しトーンが変わってきたように思われます。都市をまるごと巻き込んだ恋愛物語から、日常を舞台にしたコンパクトな物語へ。その変化を僕は好ましく思っているのですが、それがどう転ぶかは今後の展開次第ということで。