『CODE-E』と優しいアニメのこと。

主人公・海老原千波美は感情が高ぶると身体から電磁波を放出する「電波系」少女。電子機器とは相性が悪く、本人にはそのつもりがないのに周囲の電子機器をショートさせてしまうこともしばしばです。
この作品の舞台は現代よりもIT技術が進歩しているのに(『まなびストレート』の舞台と同じ位)、上記の理由で主人公にとってはそれはむしろ悩みの種になってしまう。こういう風に書くとファンタジィですが、実際には身近な問題に置き換えることも可能でしょう。例えば、地上デジタル放送対応のテレビに買い換えたのだけれど使い方がわからない、昔の簡単なやつの方が良かった……という風に。技術が進歩することは誰にとっても良いことだとは限りません。
さて、もうひとりの主人公・巫(かんなぎ)光太郎は千波美の体質に興味をもち、彼女に接近します。そして、千波美が自分の力をコントロールすることが出来るようになるために協力することを約束し、こう言いました。
「科学は人を幸せにするために……君を幸せにするためにあるんだ!」
人を幸せにするのは科学じゃなくて工学だよね、という話はさておき、以上2つの立場の対立が設定の核として存在します。ただ、それが目立っていたのは冒頭の2,3話までで、それ以降は千波美の異能性とそれが普通の世界に影響を与えていく様子を描くロー・ファンタジィ的な要素が強いです。後半に復活するのかもしれませんが。
現実的な設定とは対照的に、個々の人物造形は典型的かつ楽天的で、シリアス色はほとんどゼロに等しいものとなっています。例えば第5話「憂鬱と親子のこと。」で、千波美は電磁波で父親の仕事のデータを飛ばしてしまうのですが、父親はそれを笑って許します。それでも「本当は自分のことを迷惑だと思っているんじゃないか」と落ち込む千波美に友人は「迷惑だなんて思ってたらとっくに家族は離散している」 と励まし、事実父親は迷惑だと思っていませんでした……。
だいたいどの話もこの調子で、全く毒がありません。家族は無条件で仲良し、人間には本質的に優しい。これが『School Days』と同じ曜日に放送しているなんて何かの間違いではないだろうか、というくらい規範的な人間関係を描いています。
電波は電波でもアナログ電波だったのか、みたいな。
ドジで憎めない悪役、鈍感な男の子と積極的な女の子、表面上は冷たいけれど本当は優しい女の子など、典型的なキャラクタが典型的に振舞うため、意外性という点では大したことのない作品です。ただ、見ていると安心するんですよね。
心を揺り動かし、既成概念をひっくり返すような派手さはありませんが、僕たちが既に知っているものを肯定し、包み込む暖かさがこの作品にはあります。今後の展開に期待しましょう。