山田風太郎・せがわまさき『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』

バジリスク~甲賀忍法帖~(1) (ヤンマガKCスペシャル)

バジリスク~甲賀忍法帖~(1) (ヤンマガKCスペシャル)

これを今まで読んでいなかったというのはかなりうかつでしたね。読み出したら止められなくなって、一気に全巻読んでしまいました。
山田風太郎にもせがわまさきにも縁が遠くて彼らの作品を読むのは今回が初めてでしたが、すぐにでも『Y十M柳生忍法帖〜』の方にも手を出したい気分です。
ある時は無残な、またある時には耽美な作品世界。精密機械のように無駄のない構成。グロテスクでありながらも繊細な画力。はっきりいってパーフェクト。背景は多少好みが分かれるところかもしれませんが。
物語の舞台は江戸時代初期、江戸幕府三代将軍の座を巡って竹千代(後の徳川家光)派と国千代(後の徳川忠長)派が争いを続けていました。そこで時の大御所徳川家康は、憎みあう忍法の二大宗家・伊賀と甲賀に10対10の殺し合いを行わせ、伊賀が勝てば竹千代に、甲賀が勝てば国千代に時期将軍の座を与えることにします。ところが憎みあう両家の跡取り、伊賀の朧と甲賀弦之介は互いに愛し合っていたのでした……
こう書くと「ロミオとジュリエット?」みたいな甘いストーリィを想像させてしまうかもしれませんが、そういった甘さが最も残酷な形で彼らを死に追いやるというのがこの物語の面白いところ。
キャラクタの怨念、執念の描写には鬼気迫るものがありすが、特に女性の描き方が素晴らしい。艶かしいというかエロチックなのは当然として、彼女たちの壮絶な生き方には思わずドキリとさせられました。生きるため、殺すため、愛するため、彼女たちは忍法の限りを尽くして戦い、報われることなくばたばたと死んでいく。その切なさ。実際、魅力的な女性が多すぎて、一応はヒロインの朧があまり目立たないくらいでした。
もっとも、忍法と言ってもそのイメージからは程遠い、ほとんどモンスター同士の戦いというのが実際のところ。しかし、その想像力には驚かされます。感情が高ぶると吐く息が毒に変わる女とか(ゆえに彼女を抱こうとした男は死ぬ)、睨んだだけで攻撃を相手に跳ね返す男とか、少年誌から18禁まで、戦いのエッセンスは全てここに詰まっていると言えるでしょう。