ルネ・クレマン『禁じられた遊び』

禁じられた遊び(トールケース) [DVD]

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僕の場合このタイトルからは、ALI PROJECTが歌った同じ名前の曲の印象が強くて女王様が鞭を振りふりしている姿を想像してしまうのですが、そういう話ではありませんので悪しからず(悪いのか?)
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さて、この物語は有名なテーマ曲『愛のロマンス』と共に始まります。空襲で両親を失った5歳の少女・ポレットは偶然出会った11歳の少年・ミシェルに連れられ、ミシェルの家族と暮らすことに。そこで2人が始めた「禁じられた遊び」、それはお墓を造ることでした。
最初はポレットが連れていた犬の、次はモグラの、その次はヒヨコの……。風車小屋の中でどんどん増えていくお墓。熱中するするポレットを喜ばせるため、ミシェルは十字架を盗み出して……という話。
この映画の中心となるのは「子ども」と「大人」の対立、あるいは「自分」と「世間」の対立であると思います。
冒頭でポレットが空襲で両親と飼い犬を失うのですが、ポレットは両親が死んだことについて、一度も悲しむ姿を見せません。その一方で、犬が死んでしまったことが悲しくて泣いてしまうんですね。それに対して「両親を失った悲しみが描けていない」と批判するのは、やはり的外れだろう思います。身近な人の死を悲しみ、厳かな態度をとるべきだという規範。そういったものを相対化するために子どもたちを主役に据えたのではないでしょうか。
この映画の中では「死」がむき出しになっていると感じます。戦争という理不尽な死を背景に置くことで、お墓を造るために何を埋めようかと考える子どもたちや、お墓のために殴りあう大人の異常さを浮かび上がらせているのではないか、と。
あと、映像が非常に美しい映画ですね。冒頭で川辺を走るポレットと、ほとんど同じ構図でのっしのっしと歩く牛の姿。人間の世界とは無関係に時間はゆっくりと流れているのだなぁ、と感じられます。
テーマ曲である『愛のロマンス』についても少しだけ触れておきましょう。僕も高校の音楽の時間にギターの練習曲として弾かされましたが、練習曲になるくらいですからすごく単純なんですけど、それだけにどのシーンにも合う便利な曲です(こちらのサイトで試聴出来ます)。
明るい場面でも暗い場面でも、この音楽が流れると一本芯が通った感じになりますね。『第三の男』とツィターと共に、映像と音楽の関係を考える上で重要な曲だと言えるでしょう。
ちなみにこの映画で小さな恋人を演じた2人のうち、男の子の方は声優に、女の子の方は女優としてその後も活躍したそうです。