『おおきく振りかぶって(8)』

おおきく振りかぶって(8) (アフタヌーンKC)

おおきく振りかぶって(8) (アフタヌーンKC)

僕の場合、野球漫画と言われてぱっと思い浮かぶのが『巨人の星』だったり『ドカベン』だったりで最近の野球漫画をほとんど知らないのですが、仮に「才能のある主人公が努力を重ねて頂点に上り詰めるサクセスストーリィ」を王道とした場合、この『おおきく振りかぶって』は色々な意味でその王道から外れているんじゃないかな、と思います。
まず、主人公のいるチームが全然強そうじゃない。とても甲子園で優勝するようなチームには見えません。たぶん、いつか負けるでしょう(地区予選決勝くらい?)。
要するに、ある種の合理性というか、手持ちのカードをどう使うか?という話なわけです。
この物語は「自分に自信が持てない少年が努力して自信を獲得していく」という少年誌の王道を行くような話ではあるんですけど、それと同時に「無理なものは無理だ」という話でもあるんですよね。主人公を含めどの選手も克服できない欠点を持っている、という事実を直視することから「長所を伸ばそう」という発想が出てくる。ネガティブとポジティブ。両者を切り離して考えることは出来ません。
要するに「現実を見ろ!」ということなんですけど、その点においてよくあるスポコン物とは一線を画しています。あ、そういえば『DREAMS』にも、野球部のレギュラー落ちした部員がその後で必死に素振りするのを見た主人公の九里が「そのやり方じゃあ無駄だ」と忠告するシーンがありましたね。努力することに酔わない、酔わせない。個人的にはすごく好きなタイプの話です。